親子ドリア.

一週間後に結婚式のニ次会出席が決まっているので、母にドレスを見立ててもらう。ドレスと云っても、少し上等なワンピースである。運良く、一目で気に入った紺色の上品なワンピースと、ラインの美しいコート(まるでドレスの様に美しく広がる)を、セール中の為半額で手にする事が出来た。出世払いにしてでも、上等なのにしなさい、と母が折れてくれないので、任せる事にしたものの、試着室の中で値札を見て申し訳なさが募る。自分の服でさえ、カードで一括払いなんてする機会はないだろうに。いつか海外旅行にでも連れて行かねばならない。
セール中の百貨店は大賑わいだが、買い求めのチャンスである事はしっかり実感出来る。目的無しに行くと倒れるだろう。百貨店からショッピングモールに「下りて」来ると、途端に質の違いに気づく。いつもの気安い感じがした。
昼食は、混雑していて当たり前のレストラン街を無視して、各階にある喫茶店を覗き、空いていた店でふたりして好物のドリアを食べる。
幸せには違いないが、私だけこんなに幸せでは、勿体無さ過ぎるのだ。

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自律出来る自立した女性になるまで要らない、と誕生日に贈られるはずだったものを断った為、未だ誕生日の贈り物をひとから貰っていない。その事に関しては、気持ちとその日の祝いだけで満足しているつもりだった。が、私にはくれないのに、他の人の誕生日はしっかり覚えていて当日に用意しているなんて、とくだらない嫉妬と劣等感で、再び憂鬱に陥った。可愛いものだ、と云われそうなので、余計に拗ねる。
嫉妬、という漢字は、女が二つもついている。けれども、女性の嫉妬よりも男性のそれの方が強烈なのだ、という高校日本史教師の言葉を思い出して、はて、と考え込んだ。多分、ポジションへの嫉妬かエディプスコンプレックスに関わって生じる嫉妬は、鬼になる位強い女性の嫉妬に勝る、と云いたかったのではないか、と想像するがどうだろう。
結局拗ねても軽くたしなめられて終わった。嫉妬はそのうち消えそうなものだが、一度口を開けてしまった憂鬱は当分消えそうにない。誰かを愛しているのか、愛する事が出来るのだろうか、全く分からなくなる類の憂鬱が、身体に圧し掛かる。

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出来れば、結婚式は、セール期間中にやっていただけると助かる。