2007-01-01から1年間の記事一覧

終わりと始まり.

物思いに終止符を打とうと、例の赤い観覧車に乗った。物思いが過ぎて万が一泪が出たとしても、誰にも迷惑をかけずに済む場所は、自室と御手洗等の個室の他はここしか、その時思いつかなかった。 スーベニアの意味合いや雰囲気、以前の強烈な「恋慕」(勿論観…

終わりの予感.

年の始めにはあんなにたっぷりとしていた手帖が、いつの間にかもはや後ろの頁から開いた方が早い時期となり、薄っぺらで心なしかさみしげに見える様になった。最後のメモ頁に貼り付けておいた目標は、相変わらずばりりとした様子だが、過ぎにし日(過ぎにし…

水槽から見た赤い観覧車.

窓硝子に壁が映り込んで、鬱陶しい。整理の行き届いていない部屋で探し物を探すように、硝子に映る風景から赤い観覧車を探し出す。あまりに遠い。いつかの騒がしいバーで見た観覧車は未だ戻らない。 店の半分位が硝子で、よく磨かれたそれの外には商業的な明…

奇異 -虫について-.

会社の片隅に、いただきものの菊の鉢植えが三つ程置かれている。徐々に花が開き始め、香もフロアに広がって、秋の気配を振りまいている。 その鉢植えの一つに、近頃虫が湧いた。菊等癖のある植物を好んで食べる虫はあまりいない様に思えるので、恐らく輸送途…

もの語り.

離せない。 11/8 - 前の頁からの続きで、真新しい頁にそう綴ったのだが、切実に何かを語ろうとしている様に見受けられたので、印象に残った。

「失われた時を求めて」状の何か.

仕事の後少し時間を取る事が出来る様になり、時々足を運ぶカフェがある。そこで出されるコーヒーはなかなか美味なのだが、コーヒーの存在が霞む程にそこのほうじ茶が美味の為、近頃は決まってほうじ茶を注文している。 何度か例のほうじ茶をいただいているう…

四季の隙間に.

身辺が一段落して、やっと読書が出来る様になった。それでも、読書の秋、という節を口にするには抵抗がある。この、生温い気候は一体何なのだろうか。秋でもなく、冬でもなく、夏でもない。穴の様な季節で、書物にしてもセンチメンタルな物語とは遠いジャン…

ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん.

ふと顔を上げると、窓の外に宇宙が広がっていた。 - ひとに二時間半も待たされるのは、これで二回目である。 待っていることは嫌いぢゃない、 という或る小説に出てくる科白を思い出すが、私は待っていることははっきりと嫌いである。一刻も早く何らかの行動…

dream a dream.

美しい硝子に出会った途端、それが床で砕けてしまう白昼夢を見る。美しいまでに鋭利な刃を見ると、赤々とした血の幻想を見る。床の上にこぼれ落ちた血を水で流す時の様に、幻想は一瞬抵抗をしてみたのち、ざらりと視界から去ってゆく。 - 気に入りの店の一つ…

蜘蛛おんな.

狭い部屋で蝋燭に火を灯すと、鼻の奥の粘膜に突っ張りを感じる。そのうちに息苦しさまで感じる様になったので、窓を開けて酸素を取り込む。空気の張り詰め様が急速に増す時期にあり、気持ちも年末に向けて急き立てられる。 キャンドルホルダー代わりのカップ…

fall.

「枯葉」を何度か耳にする様になり、季節はやっと移り変わる様子を見せ始めた。「枯葉」の歌い手はイヴ・モンタンでない事が多く、大抵は煙たくほろ苦いジャズ・ヴァージョンか、ビル・エヴァンズの創作的なヴァージョンである。 - 仕事を終えてビルのホール…

エゴ対エゴ.

身に添う服が好きで、たぽっとした形状の服はまず選ばない。そういう類の服を扱う店も、しれっと通過する。どこでも良いから自分に寄り添っていてくれないと、服に見放された気になる。これが良い、と思いたいし、貴女が良い、と思って貰いたい。 - 秋服、と…

夢と魔法のワンダーランドと現実、に君.

昨日今日と続け様に、雨に降られている。 折り畳み傘の一本位鞄に入れておくべきだ、と振られた一日目で学習するはずのところを、馬鹿馬鹿しくもそうせずに、翌日も強かに濡れて帰宅した。今日は同行人がいたので、前日とは違いビニイル傘を買わずに済んだ。…

私の息子について.

会社から申し渡された資格試験の勉強と、担当業務(PCをかたかた云わせるか、何通もの巨額の請求書を書くか、男性と会話をつなぐか)で配当された体力を一日一日と消費していく事に、勿体無さを感じる。が、そういう日々に暫く身を置く事に決めたのは自分だ…

興奮はそらに.

夏の写真集2. - 社長に、阪神戦のチケットをいただいたので、観戦に行く。 芝生と土の色と、電線のないそら、肩をひしめき合いながらアルプス席で飲むビールの味の美しさに感動した。応援歌を歌う事の出来ないさびしさは一入で、勉強してから来るべきだった…

pour D.

D、に違いない、という考えが、突然頭の上から降ってきた。 自分にとって、何となく居心地が良い、と感じるアルファベットは"D"だ、と断定するに至ったものの、だからと云って、その自覚で人生が変わるものでもなさそうである。 好きな外国人の名前はDanie…

ex machina.

空調を付けたり消したりしながら、ぼやりと暖まっていくシーツの上に座り込んで、『SWITCH 25ー9 特集:HASYMO/Yellow Magic Orchest』を捲る。昨日、書店で見つけて即レヂに運んだ。 この「三人」を、YMOとして待ち続けていたのだが、中身を開けてみれば違う…

らっきーからあ.

リノベーションしたビルに入っている、若手美術家や芸術全般の書籍、作品、雑貨を扱っている書店内イベントスペースで、持ち寄り古本市が開催されていたので、講習終わりのすこぶるだるい身体を引きずって見て回った。四箇所中一箇所のブースで三冊程購入し…

シャツの穴.

ピンク色のポロシャツを着た4、50代の男性を時々見掛ける。どういう気分でその色を選ぶのか、見かけては毎度想像してみるが、あまりにも未知過ぎて結論が出ない。ピンク色、とは一体どういう訳なのだろう。 そのピンク色のポロシャツに、穴が空いている。…

放っておけ.

会社のお客さんから電話を受け、社外に呼び出されたが時間通りにつけず、しかも場所も知らない為に、見知らぬ土地でパニック状態に陥る、という悪夢を見た所為・・・ではなく、単なる前日の夜更かしの所為で起床が遅れた。 鞄と服の準備をしているところへ、母…

炭酸の弾けるとこ.

残暑のバザールといえば硝子器か清々しい生地の座布団で、ふらりと店を覗いてみれば、肝心のものは手垢塗れで諦めるも、果実酒キットが目に留まった事を喜ぶ。 焼酎もしくはジン等のスピリッツを、予め必要分の氷砂糖と果実の入った瓶に注ぐと、たった四日で…

気まずいふたり.

夏の写真集1.未だ緑の紅葉は涼しげであったが、その葉の隙間から漏れる光が何とも、悩ましい程に暑苦しい。 - 涼を求めて山の中の川へ、両親に連れられて出掛けた。 こう暑くては同じ様な計画を立てる人が多いらしく、バスは当然の様になかなかやって来ない…

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近頃の朝食は、食パン一枚は食べきれない私の為に母が買ってくれた、長いパンを二切れに、大甘党の祖母(母の母)が初夏の梅で作ったジャムである。幸せな皿。

堅気の生活.

資格取得の勉強に専念するか、勉強と楽団での活動を両立させるか、について、ここ数日頭を悩ましていた。練習に参加出来なくはないし、それなら演奏会にも何とか頑張って参加しよう、とは思う一方で、資格取得は必ず果たさねばならず、不合格となる要因は出…

抗えない事実.

楽器を買い換えたので、普段の基礎的な練習に加えて、楽器の性質を把握する作業に忙しい。レッスンの半分近くは、その作業で終わってしまった。分不相応な楽器を手にしてしまった印象は拭えないが、手なづけていくのは面白い。 基本的に、身体と楽器に自然に…

消えて無くなる前に.

カップが買えるカフェに、間食とコーヒーではなくカップ目当てで入る。視線を外せないカップが一客、二客、しかしよく考えてみれば、カップを収める為の棚なり抽斗なりが、自宅にはもうない。彼のひとの家に持って行くのはどうだろう、と考えるも、それを「…

走れ、幸運.

グロテスクで悪趣味なものも好きだ。蝶というより蛾ではないか、と思えるブローチを選んだ。紋までしっかり描かれている懲り様、派手で美しい色味が余計に毒々しい。悪趣味を自嘲しながら、楽器のケースに止まらせた。 - 久しぶりに古都のバスに乗り、車窓か…

しめしめ.

台風が迫ってきているから、というだけで、女性に早い午後に帰宅指令が下った。外は、通常の雨降りの日、という具合で、天気予報をネットで調べてみても、雷注意報、という「ざこ」な報しか出ていない。まだ仕事がしたいのに、と思いながらも、地元に入る前…

人の潤み.

湿気が増し、どこもかしこも、結露と発汗の世界である。生き物の放つ熱で、世界は潤む。電車に乗れば、薄い水の服をぴったりと纏っている様な感覚に襲われる。どこに行っても水の気配を感じる。 - 仕事の後、重い鞄を抱えて、資格学校に乗り込む。ノートを取…

喫茶店又は宵の酒場.

会社近くの喫茶店に、先日のとある「お詫び」の京菓子を持って行く。菓子を差し出して散々謝り倒すつもりだった。が、コーヒー一杯を注文すると、バタ付きパンが出て来て恐縮する。フランスパン独特の頑なさに加えて、「もっちり」とした食感がある。果たし…