2006-11-01から1ヶ月間の記事一覧

November steps.

先日観た映画「かもめ食堂」に出演していたもたいまさこのエッセイ『猿ぐつわがはずれた日 (幻冬舎文庫)』を少し読む。自由な云い回しが楽しく、引き合いに出されている事に時々、へえ、と思ってしまう。始終、あの女優独特の佇まいと笑みが、頭に浮かんでい…

アポロの夜.

同じ姿勢で同じ方向を向き寄り添う二匹の猫に視線を送る。何を考えているのだろう。猫の基準による、好き、とか、嫌い、を知りたい。到底理解出来ぬものかも知れない。 - 野外でバスを待つのが、徐々に厳しい季節の到来か。後数分を待つのを止めて、次のバス…

コピ・ルアック.

寝床から這い出るのが、なかなか辛い季節となってしまった。もう少し暖まっていたい、と思う時、すぐ近くの本棚に、寝転がったまま手を伸ばして一冊抜く。あの本が読みたい、と寝起きの頭に浮かんだ本を選ぶ。これは、二度寝より質の悪い時があり、長編を抜…

私の荷物、まだ届かないかしら.

野良猫コロニー付近で見かけるミルクティー色の洋猫は、どうも飼い猫らしい事が判明した。赤い首輪を付けている。身体つきからして飼い猫の様相を呈している、と云えども、しょっちゅう近所を散歩していたり、あまり毛艶も愛想も良くないので、飼い猫である…

カレル・チャペックの自画像.

上る必要のない歩道橋に上り、上りきろうかという辺りで気づく。引き返すのが勿体無かったのか、見栄を張ったのか、何でもなかったかの様に、天辺から続く階段から下りた。その間、自分の後ろにいた人が、下の平坦な道を何食わぬ顔で歩いて行ったのが見えた…

かきくえばかきくけこ.

お隣から戴いた、大きな柿を切り分けている途中で、「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」という正岡子規の俳句が浮かんだ。「鳴るなり」を「鳴る鳴る」だと覚え間違っている人がいたなあ、と句を何度も反芻しながら記憶を手繰っていると、一体どういう状況をこ…

さびしいこと.

大学からも自宅からも離れた図書館にわざわざ出向くついでに、雑誌を読んで目に留まり気になっていた喫茶店で昼食を摂る、という予定を、前日から組んでいたので迷わず実行する。 目指していた喫茶店は、街の商店街から折れたところに位置していた。所狭しと…

つみれのざらざら.

いくら厚着をしても、手先が冷たくてかなわない。指先の無い手袋が欲しい(こういうの)。これならはめたままで作業が出来る。買えば済む、と思っていても、自分で編めそうなものは買う気が起こらない。 祝日で珍しく家族勢揃いしたので、いつもなら毎週日曜…

photo is a mirror.

予ねてより「古都の灯台」を写真に収めたかったが、人通りの多い駅前で立ち止まる訳にはいかず避けてきた。帰宅途中に、ドーナツを食べて読書、という近頃気に入りの行動パタンを取りたくなって駅ビルに登ったところで、人気がなく写真に収めるには好ましい…

映画の続き.

或る私立大学の図書館に、紹介状を持って、論文を大量に閲覧、複写しに出掛ける。三冊の英語論文からコピーして持ち帰る頁数を挙げるという作業に、時間は二時間かかり、お金は九百円かかった。こんな直前に論文を集めても、目を通している時間は明らかにな…

たったのニ小節で間違える.

洗濯物干し用蛸足に引っ掛かっているタオルの橙色が、ぼやけた視界に差し込み、どこか浮ついて眠たげな世界を追い払う。生活の匂い、すなわち現実というものは、橙色をしているのだっけか。 クリスマスに、見知らぬ人達の前で楽器を弾かせてもらう事になった…

雨と涙の続き.

『78(ナナハチ)』読了す。寒い様な生暖かい様な、どちらを感じ取り、感想として吐けば良いのか分からない状態に似ている。何とか屋さん、に憧れを抱く始末。あらあら、という終末。 次は『十字路のあるところ』を読んでしまって、山田稔に戻ろう。そろそろ映…

雨は涙の伏線かと思った.

声を出さずに泣く事が多い。気がついて、珍しく、うっうう、と云ってみると、泣いているのだ、哀しいのだ、という気が本格的になる。こっちの方が、ひょっとするとすっきりするのかもしれない。それでも家では、心配されると困るので、聞分け良く、大人しく…

神の御心のままに.

ぞっとする思い出が出てきた。以前好きだった人が読みついでいる本にいつも挟む栞が、私もよく使っていた栞と全く同じものだった事に気がついた時の事。その栞には、聖書の言葉が書かれている。同じ経路で手にした可能性がある。それは確か小学校の時に手に…

白くなった珊瑚の行く末.

身体の為に、口寂しくとも紅茶や日本茶、烏龍茶を試している。けれども、満たされて或る程度の時間集中出来るのは、やはりコーヒー(近頃は専らインスタントコーヒー)で、これはもう殆ど中毒だ。 朝食はパンにするか御飯にするか、という選択は、寝床でする…

寒い夜の頬杖.

ネット上で声をかけた人から、本がお好きならよい童話を教えて下さい、とレスポンス有り。読書の分野でも一番手薄なところを攻められ、さあ困ったと少ない「ストック」を探る。咄嗟に浮かんだのは、『小川未明童話集 (新潮文庫)』である。 米(コメ)育ち、…

an old ballet.

ノラは今日も不在、気に入りの場所らしい室外機の上には、ノラの毛色と同じ色の落ち葉が二枚乗っていた。実は落ち葉だったのかしら、とぎょっとした。ノラやノラや。徐々に冷え込みが厳しくなってきたので、身体を寄せ合う仲間を持たないひとり身のノラが心…

「茶釜」は語る.

書物や紙類を扱う日々に、文鎮は重宝する。ちょっと文具店や雑貨屋、土産屋に入れば、ペーパーウェイト、というものはすぐさま見つかるが、大抵は一通り眺めた後埃を被るであろうものにしかお目にかからない。 いつか南部鉄瓶、「ぶんぶく茶釜」に出て来るよ…

貧乏学生の、やっとの事.

本とノラは見ない一日を過ごした。 - 早朝に自宅を出る時や、昼食の買出しに外に出た時等は、冷たい雨が風と共が、無防備な頬をぴたぴたと叩く程の悪天候だったが、夕方近くは光が濡れた地を照らし、「寒い気配」がどこかに行ってしまった。よって、傘を忘れ…

虫食いの穴.

夜中に雷鳴で目が醒め、急いでPCのプラグを引き抜いた後、再び寝入る。中途半端に二度寝をした所為か、翌日は寝坊した。 来週スーツを着る予定があるというのに、見ればスーツは穴だらけ、これでは着て歩けないので、母に頼み込んで買ってもらう事にした。…

カーニバルの朝.

「黒いオルフェ」と呼ばれる曲が、頭から離れなくなる。ギターを弾きながら恋人と至福を思い出し、彼女は戻ってくると信じている、と歌っている。 「枯葉」や「黒いオルフェ」が流れる季節になると、秋(しかも冬に向かう、という意味での秋)である事を確信…

駆り立てる菓子との邂逅.

今日のノラ記録として、かの野良猫は隣家の室外機の上でまどろんでいた。昨日の事があってか、一瞬気まずい空気が流れた気がする。そして今日は機嫌があまり良くなく、お腹もすいている様だったので、そっとしておく。こちらを見てひゃあと一声鳴いた。 狐色…

無言の多い日.

新型でも旧型でもない電車の天井から、小さな蜘蛛が一匹垂れ下がっていた。通勤の時間帯に使われる電車では、網棚(と名づけられているものの、もはや大抵網ではないのだが)に荷物を置く乗客を殆ど見かけなくなった。戸口に近い人がラッシュ時に手持ちの鞄…

窪んだ球体との付き合い.

絶好の読書日和だ、と起きぬけに、寝台の中の身体が呟いた。睡眠と読書以外する力がない、そういう体調の日であるらしかった。食事をしに一度台所に下りるが、納豆にするかお茶漬けにするか、梅干が食べたい、と考えているうちに、世界がぐらぐらと揺らいで…

そら模様と心模様.

先日から自宅の庭でゆっくりしに来ている野良猫さんが、行く手を塞いでいた。あまりに呑気にしているので、しっしっ、と云うには忍びなく、どうしようか、と思って見つめていたところ、今度は勝手に向こうから、にゃにゃにゃ、とお喋りした。そろそろ御免よ…

何も云わないで.

雑誌『装苑』十二月号(アクセサリーと紙の特集有り)の付録を「組み立てる」。くちなしのコサージュ、かわいくなるようにと思っていればかわいく出来ます、と書かれていたが、かわいくならなかったので、きっと熱意が足りなかったのだろう。 - 庭に猫が寄っ…

仕合せ者である.

死ぬの、と泣き叫び続け、草臥れて後輩の家に担ぎ込まれて眠った、という記憶がある。両親や皆にこんなに良くしてもらっていて、学校にも行かせてもらっていて帰る家もあり、多くの愛する人達や愛してくれる人達もいるのに、私は何も出来ていない、そしてそ…

単なる酔っ払い.

幼い私と弟で、父にディスニーランドに連れていってもらう夢を見た。幼い自分に、スピードの出るアトラクションに誘う父の身体を気遣う今の自分が、乗り移っていた。 引退した部の練習を、楽団を通じて知り合った大先輩と、待ち合わせていた更に大先輩とその…

拾いもの様々.

デパートの地下、いわゆるデパ地下を久々に通過した。湯気が立っていて美味しそうな食べ物に群がる人で相変わらず鮨詰め状態の階は、なかなか目的地のエスカレーターに辿り着く事が出来ない。斯く云う自分も甘辛そうな手羽先を脇見しながら、人に流されてい…

ペンギンに檻は似合わない.

『鴎外のマカロン―近代文学喫茶洋菓子御馳走帖』『波 (角川文庫)』を読みついでいる。前者は知識として楽しいが、時々引用されている文の旧仮名遣いと漢字が読めない。解釈が素人臭い(失礼)から変に親近感を覚える。レポートに似ている。後者は、研究室の…