灰色をうつす.

そらが見える場所が好きだ。たとえそれが、何色でありどんな状態であっても、だ。

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大学院生らしく、研究分野の資料に目を通し良い気分になっていたが、よく考えてみると休暇終了まで後数週間しかない。終了までに課題と授業準備をせねばならない。忽ち焦る。人は、好きな物事だけに接して生きていく訳にはどうしても行かないらしいから、苦い。これからすべき事を手帖に逐一書き留めて、まずやりかけの事を手早く済ます事に精を出す。

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一番すきな散歩道を久々に歩こうと思っていたに、大学を出ようという時に雨が降り出した。気分は下降し、疲労が増す。雨降りの日濡れた古都も嫌いではないが、今日ばかりはまともに傘の外側を見る事が出来ない。
涙を零すまいとして、灰色のそらばかり見ていた。

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あまりにも申し訳なさすぎると、哀しすぎて謝る事はおろかどんな言葉も口に出来ないらしい。
謝った途端涙がこぼれそうだ。謝って済ます前に動け、と思うのに、謝って楽になりたいと思う方が、いつも先を行ってしまう。
電車の中で泣いて、乗り合わせた見知らぬ人に迷惑を掛けたくない、と思い、電車から降りた。やはり灰色のそらばかり見つめて、大きな呼吸をしながら、自分を落ち着かせる。それでも駄目で、ハンカチの世話になった。(涙を大袈裟に零さない為には、涙腺から溢れた、零れそうと思った瞬間に、ハンカチの角でさっさと吸い取ってしまうのが良い。)

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ハンカチは、薄地でつるりとした綿のものが好きだ。真白や藍色のシンプルなものをよく使うが、欧風やレトロな柄も好き、勿論和風も良い。タオルハンカチは、大きめのものの方が好きだが、近頃持ち歩きはしない。少しルーズな感じがするからだ。(でもタオル地のふあふあ感、安心感には、毎回顔を埋めたくなる。)
近頃の小さな「主義」である。