ひと人のこと.

午前中のレッスンは、毎度お互い眠気眼である。「これから旅行に」「これから授業で発表」と云い合いながらも、バロックの楽しみについて暫し語っていただき、私は満足して御宅を後にした。決して、自分が満足出来る状態でレッスンに臨んだ訳でも、師匠を喜ばす程向上しお褒めに与った訳でもないのだが、なぜか足取りが軽くなった。

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出版技術がまだ無かった時代は、当然の事ながら手書きと写本の時代であるが、その所為で優れた作品、現代演奏しても楽しい作品が埋もれてしまっていたり、図書館が保存しているだけに留まり一般大衆のもとに届く事があまりない。そして良さに気づく事なく、大衆はそれらに手を伸ばす事を忘れている。
真摯に純なる「音楽」を求め愛し、発信して広めようとされる師匠や他の活動家達には、頭が下がる。

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常識、というよりモラル、マナーが忘れられつつある時代ではあるが、完全に無くなってしまったのでも、無視して良い時代でもない。気遣う事で他人や自分自身が気分良く暮らす事が出来るならば、「なくても良い」ものでも忘れてはいけないのだ。久々に大人に注意されて気がついた。

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風邪を引かないように、体調管理をしっかり、といつも口煩いひとが先に風邪を引き、少し腹が立った。自分が気をつけなさいよ、と苦笑した。
が、私自身も、帰宅後疲労して炬燵で朝まで眠り込んでしまい、他人の事は云ってられないと反省した。

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バロック、とは、というテーマで何度か辞書を引いたり、講義中書き留めたりしているが、雰囲気は分かるものの、いまいち自分が認識している「バロック」が本来の「バロック」であるのか分からない。ざっくばらんで華やかなのか、調和があるのかないのか…(音楽を聴いていると、均整と調和に対するあり方と云われても納得がいかない)確かに、ルネサンスの時と比べて、何かが解放されたような雰囲気はある。
歪んだ真珠(barroco)が語源だそうだ。

memo:
[一六世紀末から一八世紀中頃にかけて、ヨーロッパ全土に盛行した芸術様式。ルネサンス様式の均整と調和に対する破格であり、感覚的効果をねらう動的な表現を特徴とする。本来、劇的な空間表現、軸線の強調、豊かな装飾などを特色とする建築についていったが、激しい情緒表現や流動感をもった同時代の美術・文学・音楽などの傾向、さらには、時代概念をさすに至った。『大辞林』]
[baroque (adj) :relating to the heavily decorated style in buildings, art and music that was popular in Europe in the 17th century and the early part of the 18th century
"Cambridge Advanced Learner's Dictionary"]
[1765, from M.Fr. baroque "irregular," from Port. barroco "imperfect pearl," Sp. berruca "a wart," origin unknown.
"This style in decorations got the epithet of Barroque taste, derived from a word signifying pearls and teeth of unequal size." [Fuseli's translation of Winkelmann, 1765
"Online Etymology Dictionary"]