セルロイドの赤ん坊.

風邪を引いた。ぐずぐずした、ひどくはないが鬱陶しい奴をもらった様で、有り難いんだか迷惑なんだか分からない。今風邪をこじらすと予定がすべて狂うので厄介だ…本心では「寝ていたい」のだけれども、仕方がない。そんな怠け者の私は、三年寝太郎ナマケモノという職業が一番合っている気がしてならない。
こんな奇怪な夢を見た。浴槽(現代の家庭にある様なものでなく、より狭くて無機質な)の底で巨大な受精卵が分割したり変化を遂げたり何なりしているところを、じっと観察している。十月十日(九ヶ月)ずっと見守っていたのか、それとも早送りを見ていたのかは分からない。そのうち、器官や心臓らしき部位が出来上がり(尤もその辺は不正確のはずである、何しろ生物か保健の授業で取り入れた私の曖昧な学習内容でしかないのだから)、あれよあれよと云ううちに胚がえい児になり産声が上がった。まあこんな事はあり得ないと夢の中でも考えていた私は、目の前で起こる非現実に困惑し、この化け物をどう葬るかという事に内心必死で、なぜか母を呼びに風呂場から出た。呼んできたのかどうなのかは定かでないうちに、赤ん坊は自ら風呂場から這って出、私に抱っこをせがんだ。赤ん坊はセルロイドの人形の様に硬く少しざらついていて、ほんの少しだけ熱を宿していた。私は怯えて「私は君を育てられないよ(そもそも私は君の親ではないのだから)」と云い赤ん坊の首を絞めようとすると(しかし硬くて絞まらない)、いきなり赤ん坊の顔は怒りのそれに変わり(阿修羅像の様だ)呪いの言葉を吐き逆に私の首を絞め出した。仕方ないじゃん、親に云いなよ、と、赤ん坊に罪はないのにと思いながらも言い訳をしていたらば、せめて謝りなさい、と赤ん坊が云う。はっとして素直に謝ると、赤ん坊は首を絞めるのを止め、以下の様な旨の事を云って立ち去った。ではここは大人しく去るとしよう、ただし、お前がもしこれから栗や栗の入ったものを食べたら、私は必ずお前の命を奪いに来るから、と。
…赤ん坊のくせに野暮な事を云う。まったく、親の顔が見てみたい。それなりに怖い夢ではあった。

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じりじりという、物理的な音がする目覚まし時計を買った。セールにあやかって、雑誌や書籍整理の為の箱をついでに買って帰った。収納用具を買う時は決まって自動車が欲しくなる。といっても免許もまだ取得していないので、大きな荷物を抱えて電車に乗り込む。人の迷惑にならぬようにするのに、一苦労した。
箱の側面が斜めになっているデザインで、雑誌を並べるのに都合が良い。

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大型書店で専門書を一冊購入す。レヂの「入り口」と書かれた場所で並んでいたらば、「先に並んでおられたお客様がいらっしゃいますので…」と移動を命じられた。ちゃんと人の邪魔にならない様に気遣いつつ、その上で「入り口」という指示通りの付近に並んでいたというのに注意されたものだから、憤慨してしまった。勿論「先のお客様」は優先した。分かっている事を注意されたり、不本意だった時憤慨するという事は、大の大人はしない反応なのだろうか。いつまで経っても子どもで情けない、とも思うが、こういう気持ちに自覚的でないと、人の不快を理解したり人に対して気持ちの良い対応は出来ない気がする。一概に、子どもっぽさを否定しなくとも、今は良いか、と思っている。