ムード音楽と焼き飯の泡.

午前の予定と午後の予定の間にあまり空き時間がなくて、午後に行く予定の場所を突き止めておいてから、通りすがりの喫茶店に入る。
ひまわり、という名の喫茶店は、付近の会社員で繁盛していた。新聞を捲りながら煙草を吸うか、漫画棚を一瞥するか、同僚と仕事の会話をしているかの大人の中で、高い椅子の上で焼き飯を頬張る。喫茶店の店員と云うより、バーのママと云った方がしっくりと来そうな女性が運んできた、家庭的な見た目の焼き飯は、美味しいのだか不味いのだかよく分からない、泡の様な味がした。予定の時刻の15分前になってやっと目の前に現れたコーヒーは、予想通りとてもすぐには飲み下せない熱さで、しかもカップが薄すぎて熱が直接唇に伝わって来るので、口元に運ぶだけでも一呼吸置かねば叶わない。仕方がないので、口内掃除程度に二口だけ味わって、失礼する事にした。
煙草を吸わないくせにマッチ箱を拝借するのは申し訳なくて、店名の横に添えられた向日葵の絵のついた、素朴なそれには手を触れずにおいた。