奇異 -虫について-.

会社の片隅に、いただきものの菊の鉢植えが三つ程置かれている。徐々に花が開き始め、香もフロアに広がって、秋の気配を振りまいている。
その鉢植えの一つに、近頃虫が湧いた。菊等癖のある植物を好んで食べる虫はあまりいない様に思えるので、恐らく輸送途中にくっついて来たのだろう、と踏んでいる。事務員仲間で鉢を取り囲み、気持ち悪いね、と云いながら未だ茶色くて小さな虫達の駆除作業を行ったものの、数日後生き残りらしいのが一匹、青くふっくらと成長して花の上に現れた。葉はやはりまずいのか食べずに、黄色い花びらをしこたま食べては時々眠っている。
気持ち悪い、と云いながら、ついつい見入ってしまう。こんな性質は自分だけか、と思いきや、他の人もそうであるらしく、先程見たらどうこう、という会話が聞こえてきて可笑しくなった。
どうせ花が咲き終わったら鉢植えを処分しなくてはならない。それなら、虫一匹位に餌として提供しておいても構わないだろう、と駆除を見合わせていたところ、食事に必死になりすぎてか間抜けにも床に落ちていた為、結局追い払ってしまった。
透ける皮膚の下で体液が流れていく様子や、餌を食む口元、呼吸の為上下する腹、徐々に鋭くなっていく体毛等は、気持ち悪いと云えども観察し甲斐があり、菊よりも興味をそそったのに残念である。