財布に用が無い日.

使うにも使えるモノが、財布に存在しなかった今日は、ひたすら、
モノが無くても居場所を提供してくれるところを彷徨った。

文化施設
(廃校になった小学校を改装して、喫茶や展示、制作用になっている。
明治に建造された、かなり洒落た建物。
カリフォルニアのスパニッシュスタイルと云う建築様式だそうだ。)
のベンチで、数時間読書をして過ごす。

オーランドー (ちくま文庫)

オーランドー (ちくま文庫)

煙草の灰入れが置かれているスペースなので
隣のベンチから、ときおり煙が流れてくる。
紫煙は秋の風にまぎれる為、こちらに流れてくる頃には
ほぼ匂いのみになっているが。
匂いは嫌いで無いので、やり過ごす。
…昔祖父が吸っていた煙草の匂いが、忘れられない。

肌寒く感じ始めたあたりで、其処を退去。

次は、本屋に行く。
(…決して暇なわけでも無く、直ぐにでも帰宅し
着手するべき作業に取り掛かりたくもあるが、気分が帰宅に向かない)
普段、堂々と長時間立ち読み出来る度胸が無く、必要も無い
私であるが、(本は手に入れて、腰を落ち着けて読みたい。
少々の立ち読みは、品定めに)
時間は有ってもお金が無い本日、
書店には申し訳無いのだが、存分に立ち読みする事にした。
…長くは続かなかったものの、
雑誌(放浪、観光用に)と或る作家の新刊を、立ち読んでみた。
穏やかなジャズ風の音楽が、居心地良くさせるのか、
新刊に滑らす視線が途切れない。
(良い気分・心地での本選びと長居を狙ったBGMセレクトが行き過ぎると、
立ち読み人口が増える、という事を体感。
あと、近眼と腰痛持ち、大荷物持ちには、平積みは辛い。
<しかも大抵位置が低い
そして、平積みの上は高すぎる棚が聳え立つ。
そんな店に限って、梯子も踏み台も無い。
踵を浮かして本を取ろうともがき、挙句の果てに取れない時の
恥ずかしさといったら…)

店内が混雑し始めたあたりで、其処も退去。


次は…図書館に、と思ったが
(前述の『オーランドー』を読み進めたいが為。面白く、熟読を要する)
いい加減小腹が空いた(モノが無いので、珈琲一杯も呑めない訳で)
のと、作業が気になったので
(余り出歩き続けると、作業を進める体力が帰宅後残らない)
帰宅する事にし、電車に乗り込む。

…と、嫌な響きのベルが鳴り、電車が走行途中で止まった…
人身事故らしい。


お金が無い日(※三度の飯は支給)、過ごし方を深く考えずに居ると
読書に走るらしい。
何かお金が必要になる事態に遭遇しなくて、本当に良かった。
今日のような「道楽」は、未だ親の脛を齧っているからこそ
実行出来るのである。暢気過ぎる。
…時間を作って働け、私。