貝の口.

どうしようもない事実と自己嫌悪で、呑みたい気分になり、勢いよくアルコホルの缶を空けたらば、案の定酔ってしまった。こんな気分で呑んでも決して美味しくはない。酔っても気持ち良くははならない。構って欲しさと御機嫌取りの為に、彼のひとにメールをすると結局「おやすみ。」を頂戴する。「さ〜びし〜な〜…」と呟きながら眠りに落ちるとその先で、ぐねぐねとうねった感触と内容の夢を見た。

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久々に大学の食堂にて昼食を摂った。味噌汁、御飯、小鉢(山芋の梅肉和え)、おかず(春巻きとサラダ)の三百円少々で満腹はやって来た。何と仕合せなのだろう。
親戚を帽子選びに付き合わせ、歩き回るも収穫はなく、なぜかクッションカヴァアを携えて帰宅する。予ねてよりクッションカヴァアを求めていた事はいたが、丁度欲しいものが今日見つかるとは予想だにしなかった。そしてなぜ、クッションカヴァアなのか。(それは、白くふあふあした、一度手にすると離せなくなる程心地よい代物である)
夕飯は、祖母宅で親戚と共に摂る。祖母が作った豚カツは、一等美味しい。丁度良い薄さでかりりとした揚げ具合は、どれくらい修練すれば会得出来るのだろうか。祖母の見事さは、豚カツだけに止まらず、料理だけにも止まらない。80年という歳月の重みと価値を想った。

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好きな髪型に似合う身体になる様頑張ろうと思う、と宣言した親戚には驚かされた。服装に似合う体型づくりを心掛ける、という宣言はしばしば耳にするが、髪型に合わせて…という宣言は初めてである気がする。真の御洒落人、という軽くて客観的な形容よりも、自分を大切にしている人、という形容が適当である気がした。自分の輝きと輝かせ方を知っている人、良い意味で自分を大切にしている人は、それだけで魅力が有る。羨ましい…と沈む前に、私ならば何から始める事が出来るのだろうか、まずそこから一歩を踏み出す必要がありそうだ。…難儀である。何に関しても大概はそうであるから、もうすっかり慣れてしまった。何も無いのだから、仕方が無い。

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帰宅して「只今」と云うと、父母共に「なんだ、---(弟の名前)ぢゃないのか」「---かと思った」と云われ、何だかむっとして「私は帰ってきたらあかんのですか」と呟いた。「そんな事は云ってないでしょ。どうしてそんな捻くれた取り方をするの」と母に云い返され、余計に哀しくなった。私の所為なのだろうか。きっとそうなのだろう。けれども、何も云えなかった。謝る事も出来ず、云い返す事も出来ず黙ったまま、内の涙を流し外の涙を殺す。そんな日々がもう、一年以上続いている。否、小さい時からずっと、私は沈黙し続けている気がする。