麦酒のみ解禁.

勉強をしに、大学に行く。がしかし、愛車のブラウン氏が「出かけたいよ」という希望の光(反射光であるが)を、銀色のその車体から放っていた為、誘惑に負けてついつい彼に跨って出かけてしまった。向かった先は、いつもの古書店と書店、喫茶店である。眼鏡を持って出るのを忘れていた為、本をチェック、選別するには、本の目と鼻の先まで近づかないと見えない。下方の棚を、長時間腰を屈ませて見ていた所為で、腰が痛くなった。
欲しい本は山と有り、しかも手が出ない程の価格設定ではない。が、購入出来る余裕も贅沢への欲求も無い。結局手ぶらで古書店を出た。近頃目当てにしている書籍は、美術・服飾雑誌、随筆、専門書(言語や文学に関する)、幻想文学(特に澁澤龍彦…随筆、フィクション共に。福武文庫版は必ずチェック)、文芸雑誌、日々の事に関するエッセイ等で、「購入しよう」と思い立つと、どれを最優先にするか、という迷いに切りがなくなる。それならいっそ全て諦める事にしている。本の出会いも、ヒトとの出会い同様、出会うべくして出会っている気がするので、きっとまたその本と出会う事が出来れば、それは良縁に違いない、また会いましょう、と行って別れる。…辛い別れではあるが。
新刊書店では、ここ数日読んで気に入り、もう何作か追ってみようという気になった、R・ブローティガンを一冊購入す。大学・大学院を通して外国作品に触れるようになってから、随分読書の幅が広がり、それと同時に視野が広がった様に思える事が嬉しい。最初は取っ付き難い外国文学だが、「読み易い」「面白い」と感じる事が出来る作家から読み進めていく事が一番気楽であろう。少し気に入った作家がいれば次に、その作家が影響を受けた作家や同時代の作家に取り掛かるという道筋が楽しい様に思う。
茶店では、桃とバナナ(だったかしらん)のスムージーをいただく。食欲が減退している時は、果物と水分を摂る。ジューサーで砕ききれずに残った果肉の塊が、ストローの先に詰まってなかなか吸えず、「ちゅっ」という音を店の中に響かせてしまって、恥ずかしかった。

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部活時代の先輩が来られ、同輩と一緒にお酒をいただく。これまで暫く、アルコホルが入ると情緒不安定が助長され、他人に迷惑をかける事を避けて断酒していたのだが、週末に大学院の同専攻の方々との飲み会の予定が有り、その予定の「慣らし」の為に今日久々に軽く呑む事にした。弱くなったと云えど、程好く酔うという気持ち良さを味わう事が出来る今は、呑めるだけ呑む事とは別の愉しみが有る。

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或る同輩に、「夏目漱石『こころ』の様な立場、つまり、恋愛か友情を取る場合、どっちを取るか」と訊かれた。しばしば挙がる話題である。平常時私は「友情」と答えるが、今日はお酒が入っていて「恋愛」「或いはどっちも捨てる」と答えた。改めて考えると、どっちをとっても間違いでも偽りでも罪でもない訳だが、問題はその「取る」過程である、と主張したい。公正に又は狡猾に行うべし。罪の意識や後悔が生まれるような失敗をするならば、捨てる(諦める)べし。女性を不幸にする事なかれ!