有る無し.

眼鏡を掛けたまま、化粧水を顔につけようとしてもがく。眼鏡を外さないといけない事を忘れていたらしい。眼鏡を掛けたまま、髪に櫛を入れようとして眼鏡を顔からずり落とす。眼鏡は弦があり、それに櫛が引っ掛かる恐れも忘れていたらしい。

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「?」クエスチョンマークが輸入される前の筆法を、そう云えば、自分には容易には書く事が出来ない。書く事が出来るかどうか、という以前に、どんな風になるのか、思い出せもしない。少し研究しようと思う。

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去年のこの日の断片的記憶はずっと持ち続けるだろうが、感覚を伴う想いはすでに失われてしまっていて、手元にはもう戻らない。
「『この人だけは信頼する事が出来るかもしれない』と思ったけど、違った。」と云った人は今、誰かを信頼して暮らせているだろうか。それだけをずっと願っている。