動物園にて.

一年越しの念願が叶い、動物園に行く。
動物の可愛さに思わず唸る。初めて(恐らく)見たラマが印象に残っている。半眼に穏やかな表情(ひと曰く「アルカイックスマイル」)に、毅然と高貴な歩きっぷりの彼ら彼女らは、ずっと見ていたい気になる。
ハクビシンをハクシビンと発音し、赤面す。(その場では自分では全く気がつかないが、後で他人が発音している時に気がつき、いつも恥ずかしくなる)
ライオンは、突き出される幾つかの電話のカメラに吠えていた。ネコ科の猛獣は、寝ていると猫そのものなのに、吠えるとやはり怖い。ライオンに至っては、思っていたより凄い声量である。クマは見た目も大きさも恐ろしい。あんなのに、ある日森の中で出遭ったら、自分は死んだと思って良いだろう。
動物園は、野生動物を保護し、野生に帰す取り組みもしているとの事だった。が、動物園生まれ動物園育ちの動物は、TVで見る野生動物より生きている実感に欠ける。野生か動物園かどちらが仕合せかどうかは知れないけれども、檻に一頭だけで暮らしているカンガルーは明らかに寂しそうに見え、解放時間が終了するといそいそと檻に自ら入っていく羊は「ふれあい」に疲れている様だった。野生帰り待ちの梟達は寄り集まって、動物園とヒト観察を楽しんでいる様だった。彼ら彼女らからは、檻に入ったヒトが見えるだろう。

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川縁に座って話し込んでいると、コーラス団体の音程を外した歌声に笑った。楽しければどうでも良い時もあろう。

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大通りをひとり歩いていると、カフェのテラスに座っていた外国人男性と目が合った。彼は何かの直感が降りてきたらしく、歩いている私の横にくっついて来て「hello」と声をかけてきた。電話に向かって云っているのか(携帯電話が普及してきた頃から、自分に対する声か電話の向こうに対する声か、よく惑わされる)と思い--正確には、英語が出来ない私は外国人とは出来れば話したくない為--無視していると、舌打ちしながらちらちらこちらを見て去っていった。その時私は黒縁眼鏡をかけていていたので、きっと真面目で純粋、世間知らず女の子に写ったのだろう。そういう子に何をしかけるつもり…という目線をこちらは直感で感じた。
私の勘違いで、単に仲良くして欲しかっただけならば、ごめんなさい。(そうは決して見えなかったけれども。女性の直感、特に身の危険は当てになる、と自負している)
人生初ナンパ、と自慢したいが、これはとても微妙である。