てくてく.

翌日から始まる講義のテキスト購入、図書館の資料返却の為、大学に行く。用事を済ませててくてくと寒空の下、散歩に出かけた。北の山が白い。帰るまで天気がもつと良いが…と思っていたところ、生憎途中雪が降り始めた。大学がある土地は山に近く、市内でも北の方であるので、一段と冷え込む。
そういえば手袋を買わねばならない。去年は気に入ったものが見つからず、末端冷え性を我慢して「出会い」を待っていたらば春になってしまった。今年こそは、と願ったところ、自分好みの手袋が今年は多く出ていて嬉しい。が、まだ探しに出かけていない。…こう書くと必ず、『てぶくろをさがしに』という、狐親子の童話が思い浮かぶ。その絵本が、至極柔らかく温かいタッチで描かれていた事も。
絵本ではないが、近頃たびたび『星の王子様』のなかのフレーズが頭をよぎる。新訳が出て、書店でよく見かけるからだろう。羊の絵を描いて、とか、薔薇の事、狐の事、蛇と王子様の会話等、大切なものは目にみえない事、等、突如浮かんでくる場面は幾つかある。たとえ新訳の方が「良い訳」とされ、それにいつか目を通す事があったとしても、私の中にある『星の王子様』は旧訳のまま変わらないだろう。いつだったか読んで涙を流した事も忘れない。
行き着けの書店で古本市が開催されていて、串田孫一『自然の断章』他一冊を購入した。ここの書店に余分なお金を持って入ると、碌な目に合わない。つい欲が出てしまう。『自然の断章』は今日棚の前に立ち、初めて知り手に取った本だが、表紙と中身を一分少々見ただけで、これは自分にとって良い本らしいと分かった特別な一冊である。調べてみると、串田さんは今年の七月に亡くなったらしい。題名だけ知っている本が多かった。ゆっくり本を読む時間が欲しい、とこういう良い本が見つかると思うのだ。
久しぶりに雑誌を買って、思う。雑誌を読むには、時間か気持ちかどちらかの余裕が必要、あと机も出来ればあって欲しい(手で支えて読むには雑誌は些か重い)、という条件を考えついた。雑誌は殆ど娯楽であるし、その娯楽に避く時間がある時でないと、雑誌は読む気がしない。そして、完全に内容をインプットする必要はないが、内容に触れる気力が必要であろう。「隙間」の為の読み物なのか。