心地とかおり.

久々に恋愛絡みの漫画(電車等の公共の場では読みづらいレヴェル、念のため)を読む。魚喃キリコの描き出した人々と共に、気づく。細々とした所作や感情、「風景」を外さない点が、この漫画家の凄い点だ。

「傷つくのと 傷つけるのとでは 
傷つけるほうが 何百倍に つらいんだと思った
かえらなくちゃ かえらなくちゃ かえらなくちゃ
かえって あのヒトを 抱きしめてあげなくちゃ」

---「大切な帰るべき場所(ところ)」(『痛々しいラヴ (Mag comics)』)

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今日は寺に詣でた。初詣の場所として浮かぶのはなぜか寺ばかりで、変な心地がする。神社に行かないまま、正月が終わりそうだ。せめてお札を焚き火にくべる為だけにでも、行きたい。有名な場所しか浮かばず、辿り着くと案の定人の波が出来ていた。たまには賑やかな場所も良い、と思うのだが、連れまわされたひとはどう思ったか、知れない。少々長めの石畳の坂を人に押されながら進んだ。なぜか坂のある土地は好きだ。
お茶を飲んで一息つくにも、どの店も人で溢れかえっていて、また長く歩く羽目になった。結局比較的空いている喫茶チェーン店に落ち着き、空腹を訴えていたひとが、クラブサンドにがっつく光景を見て安心する。アメリカンコーヒーの薄さが疲れた身体に丁度良く感じた。

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澄んだそらに寺の屋根が栄えていた。現代の日本にいる事を忘れそうな視界だった。
納骨堂の前に並んだ色とりどりの湯呑み茶碗と、伸びていく線香の煙から、茫然と死のかおりを嗅いだ。寒い、と縮めた肩に雪が舞い落ちた。