まともな雨.

「まともに」雨が降っていた。強かに降っている、でもなく、小雨、でもない雨は、何と形容したら良いのだろうか。「雨が降る」という概念のプロトタイプ(代表例)には、形容する必要がないが、本当に真っ当な降り方の雨だったので、何とかして特別に呼んでみたかったのだが。朝から母の自動車で僻地の図書館に連れて行ってもらった。窓から見える濡れて黒さが増したアスファルトと灰色のそら、水滴で潤むがちゃがちゃとした街の色彩が、雨の無色透明さを強調した。
久々に雨が降ったのだから、雨の音を聞いて自室でぼんやりお茶を飲んでいたかったのだが、生憎予定が入っていたので図書館からそのまま駅に向かった。楽器を半透明の大きなビニル袋で包んで持ち運ぶ。*1…しばしば「相変わらず過保護」「ユウちゃんの楽器は愛されてるねぇ」と半ば呆れられながら云われる。
部を引退後期間限定で組んだアンサンブルのメンバーが、やっとパートに一人ずつ揃った。一人ずつでは調和も何もないが、仕方ない。ミスをすると曲にならないパートを担当しているくせに、一向にミス多発癖と度胸の無さが改変されない。

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練習後、アンサンブルのメンバー数人と夕食を摂る。結婚の話等かなり私的な話題を持ち出して親しそうにしている割に、沈黙も許し合っている先輩二人を観察した。一番手っ取り早いのは「できちゃった」やで、という声が聞こえ、それは困るなぁ…と茫としながら、バイトの男の子(部の後輩)がせっせと20個の三角おにぎりを結んでいる姿に視線を移した。働き者は輝いて見える。料理をする男性も輝いて見える。
だしまき卵、大量のじゃが芋、おでん、串カツ、とり雑炊を御馳走になった。お酒は麒麟麦酒を戴く。

*1:楽器は水に濡れると厄介なのです。ボディは木製である為デリケートな上に、接着剤は膠なので。私の使用している楽器ケースは、外見は水をはじく素材ではあるものの布製、中身は楽器本体保護の為水の吸収率が抜群になっているので、いずれにしろ水には弱いのです。