鱗翅目.

二年前部を引退する際書き記したノートを参考に、自己分析のほじくり返しを行う。少し遠い過去になりかけているので、懐かしいとさえ感じる。当時持っていた主な感情は、薄らいだもののまだ生々しさを保って、脳の中に残っている。達成できた事、妥協した事、捻じ曲げてしまった感情の事、記憶の柱になる様な部分は忘れていない。過去は変えようがない、その事実はプラスにもマイナスにも働くから面白い。変わらないから救われている事もあれば、変える事が出来たならば、と思う事もあり、かたや、変わらないからこそ未来に繋げる事が出来るという利点もある。
ともかく、頑張って良かった、と思うに至る。

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腰が重い。やる事が山積みであるにも関わらず、我が腰はちっとも軽くならない。何時間でも無意味に座って居られる。

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電車内で『ロリータ (新潮文庫)』を読んでいて、変な目で見られた気がした。妥当な反応、と云ったら愛好家と知識人の反感を買うだろうが。
内容は世間の書評等に任せておいて、この作家の文体と作風が気に入っている。五感を伴った想像をかきたてる、その事細かで美麗な描写は、読者の好き嫌いの分かれ目であり、ごてごてとしてまわりくどい作風を好まない者にとって邪魔でしかない。しかし、好む者にとってナボコフの作品は、大変魅力的で麻薬的と云えよう。勿論、身体の描写もこだわりを以って書かれており、その描写がより一層対象の魅力を引き立たせている。
ナボコフは無類の蝶好きでもある。蝶好きならこの作家の作品や文章のどこか(多分蝶に似た、美やコケティッシュさ、手で容易に壊せそうな脆さ)に惹かれるはずだ、と勝手に思っている。なぜなら私が蝶好きだから、という非常にくだらない根拠を挙げておく。蝶等という、美しいだけしかとりえのない小さな虫類に惹かれてしまう精神を、理解するかしないか、という意味でもある。