遠のくそらいろ.

「血」を感じた。
漠然と脚本家になりたくて、そして半ばなれると信じ、まず自伝を書き始めたところで亡くなった祖父と、漠然とライター(その種類は多種で未定)になりたくてもじょもじょと動き始めた私(やっぱりいつかなれると半ば信じている)は、やはりどこかで繋がっている。とにかく本が好き、本を買いっぱなしで積んでおく事も好き、紳士淑女気取りが好き、人と関わるのは好きだけど放っておいてもらっても平気、世話好き、酒好き、保守的な私達は、血とその他の何かで繋がっている。
遺志を継げるかもしれないし、私も祖父同様夢を夢で終わらせてしまうかもしれない。それに関しては、まあいいや、と私も祖父も云うだろう。夢だけが生きがいではないから、それでも良い。

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小さな用事があり、一週間と数日ぶりに大学に行き、外で楽器を弾いた。やはり自分の楽器が一番馴染む。身体に、目に、耳に、心に馴染む。
久しく会わなかった、会っても避けていた或る人が、珍しく近づいてきて話かけてきた。そして、遠くに行く旨を告げて、去って行った。こんなに調子良く、ユーモアの種類をも嗅ぎ取って話が出来るのに、どうして私は何年もこの人に、本当の想いを伝える事が出来なかったのだろうか。その人は何かに傷つき何かを諦めているけれども、何かに最後の希望を抱いている人だった。私はその最後の希望になろうとしたが、肝心の一歩を踏み切る自信がなかったのだ。違う、と云われたらどうする…そんな事ばかり考えていた。本当に人の事を想っているならば、そんな事(否定される事)なんてどうでも良いだろうに、役に立てさえすれば良いだろうに、と今は知っている。
こちっとした古都の冬、過去に何度も見つめたその人のそら色のセーターや細い肩が、暫く奥に追いやっていた切なさを呼び起こした。
せつない、と云いたかったが、誰にも云えなかった。行かないで欲しい、と云う事も、もう決して叶わない。

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徹夜予定でさえ、調整が必要なんて!