消毒待ちの調教的羊.

流行のビルのなかの、雑貨と書籍とインテリアが雑居するという流行のスタイルの店を覗く。デッドストックもの以外格別欲しいものはない、また格別買うものはない。
随筆 本が崩れる (文春新書)』を手に取る。以前一度お目にかかった気がする。 手にぼたっと落ちるような厚さと、中身のざっくばらんさが良いような気がする。いつか読みたいが、著作が多い作家は、一度嵌ると後後大変だから、注意が必要なのだ。
貝で出来たスプーンがあると、いつも手に取る。今日もまた手に取る。と、分かった。好きなのに集めない理由が分かった。それはとても単純な事だったので、馬鹿らしい。一本でも買い始めると切りがないからなのだった。
美しいレタァセットをよく目にするけれども、惹かれるものはいつも、潔く美しい余白と最低限の書き込みのある「紙」である。オニオンスキンやグラシンの封筒は、流行に乗って近頃多く出回っているので、嬉しい。文通の夢ばかりが膨らむけれども、今のところ相手がいない。中身が無くては、と思うのに。

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スプーンとマンドリンは、形が似ている事も、発見した。

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待っててね、と云ったはずの古本が、店から消えていた。駅にある古書店なので回転が速いのだろう。即購入出来る程の値段では無かったのだから、仕方がない。出会いを待つ。
新書が100円均一で並んでいたので、500円分拾って帰る。『食の文化史 (中公新書 (417))』『比較ワイン文化考―教養としての酒学 (中公新書 612)』『ベートーヴェン (岩波新書 赤版 16)』他。
他、選考会場から近い、或る出版社直営書店を覗く。『レターレターズ (新風舎文庫)』を購入して読みきる。大学の同人「レターレターズ」のメンバー六人を装って綴られたもので、大学生の「生態」と「セイシュン」が見られ、大いに気に入る。詩あり童話あり(赤ずきんちゃん!)エッセイあり論文あり、何度も美味しい。

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或る大手企業の筆記試験を受ける。会場に着くと、すでにエントランスホールには黒い列が出来ている。私のレヴェルではまず通らないだろう。やれば出来るがやらなかった事に対する諦めには慣れてしまった。やらなければ当然結果は出ない。
番号とタグを与えられ、ずらずら並ぶ。消毒待ちの羊の気分だ。(消毒液で満たされた腰風呂の中に、当たり前の顔をして自ら浸かりに行く羊の群れの)

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調教的羊、調教的野菜、調教的…