cleverness.

書類を万年筆で書こうとしたが、安物だけにインクの出が至極悪く、ひどく憤り中断す。インクを刺しなおすと暫く調子よくしているが、数字書くと全く出なくなる。ひょっとすると、インクの管に欠陥があるのやもしれぬ。
勉強に身が入ると、どうしても気に入りの帳面や紙挟みを探しに行って、見つかれば求めたくなる。実際はそれ程購わなくとも足りるのものなのだが。よって調子づいてしまうと、余らせる。近年はそれでも学習したつもりであり、手元にある分で欲求を満たす事を覚えた。使い切る事が出来なかった帳面は、使った分を切り取り、残りの部分を他の用に使うようにしているので、使いさしで薄くなった帳面も何冊かある。格好は良くないが、愛着と以前使っていた時の記憶が挟まっている。

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ピアノの音が聞こえる。荒城の月。これぞ日本とも云うべき、深い曲だ。

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講義に集中する(集中しているつもり)一方、一番前の席に座って先生の仕草を逐一観察す。その「クレバー」な御仁は、しょっちゅう外れる上着の一番上の釦を気にしている。指についた白墨の粉は特に気にしない。指は短めであるが端整で行儀の良い白い手をしている。同様に肌は白いが、首元の肌理は少々粗い。異状の無い首と撫で肩が徐々に目につく。
首はその人を表す、という極論をぶちたくなる。
「脱」文学研究、とも云うべき大言を口にしている最中、御仁はまたもや外れた釦を嵌めなおしていた。

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縁取り紙をコーヒーチェーンで書いていると、社会人一年目の部の後輩が二つ向こうの席に座り、ひとり驚く。連れがいたので声はかけずに、メールで挨拶をしておいた。