せめて、モカを.

襤褸を纏った小さな骸骨がバケツの中から何か喚いている。お湯を入れてやると、えらく喜ぶ。少し怖い夢だった。ポーの小説を斜め読みして寝た所為だろう。

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ファーストフードチェーンの中でも、サラダとコーヒーで500円越える店もあれば、アップルパイとコーヒーで200円ぽっきりの店もある。ファーストフードのコーヒーに200円以上かけるくらいなら、喫茶店で飲みたい。100円なら何も云わずに有り難くいただく。

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数十円単位で懐を気にし、時に苛立っている。如何にして安価で気分を満足させるか、という格闘に、毎昼食時身を投じている。こんな事は馬鹿馬鹿しいと思うのは、家族と同居していて朝と晩の食事には困らないからであろう。毎食格闘する事になったらば、あまりのシビアさに性格と目つきが変わりそうなものだ。

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小説の出だしの文だけを集めた本、というのを作れたらいいなぁと唐突に思った。「それは恋に似た何かだった。」とかいうような訳分からない文章を並べ立てて悦に入ってみたい。

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待ち合わせ時間の埋め合わせと作業進行の為に、もう一件コーヒーチェーンに立ち寄る。少しだけ長居させてもらう事へのお許し、という名の自己満足に(また「馬鹿馬鹿しい」事この上なき)、ブレンドコーヒーでなくて割高のモカを注文した。
好きだった人に似た人が、机の延長線上で同じく書きものをしていて、一瞬心臓がどっと鳴る。が、鞄と靴(鞄と靴にうるさい人なので)とオーラが違う、と判断し落ち着きを取り戻す。

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なるべく紙幣を使わないようにすれば節約が出来るだろうか、と考え(「馬鹿馬鹿し」過ぎやしないか)、紙幣やカードが入る大きな財布とは別に、小銭入れを持つ事にした。気に入りのがま口は、芸大生の製作物として売られていたもので、リアルな赤い金魚が幾重にも重なってプリントされている。そのグロテスクさと生臭さが気に入っている。