旅日記.

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緊張して眠れない。5時の電車に乗れるかという緊張が半分、社長に会い云いたい事を云う事が出来るかという緊張が半分である。新幹線でもきっと眠れないだろう。困った。

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眠れないので、電車の中で読もうと鞄に入れたが余りに嵩張る為躊躇した本を読む事にした。業界を知るには最適の本だが、辛辣なルポである。『だれが「本」を殺すのか〈上〉 (新潮文庫)(下)』

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最寄駅に着くと、すっかり旅気分になっていた。これでひとり旅の味を知るやもしれぬ。
両親は私に対して過保護でありすぎる。幼稚園生じゃあるまいし。何かれ構わず忠言されると、かえって注意力が散漫になり、自ら事態を把握しづらくなる。嬉しい事ではあるが、本当にお互いそろそろ自立しなければならない。
早朝こっそり出掛ける予定が、両親ともに起き出してきた。間に合うから大丈夫という声は制され、駅まで送られる。しかも新幹線に乗ったらメールを入れろ、との事、一体どれだけ頼りなく思われているのだろうか。しかし日頃の行いと極度の方向音痴という、頼りなさの要素がまだまだ満載であるから、仕方が無い。
新幹線乗り場に入り、視界が開けると、気分が良くなった。常に旅をしていたい、とさえ思いかけた。 新幹線のフォルムにグッドデザイン賞をあげたい。
緊張が解けたのか、新幹線に乗り込むと、鞄に仕舞い込んできた社長の著書である詩集をも読まずに、眠り込んだ。一方隣席のおじさんは熱心に読書をしている。羨ましいが、瞼が重い。その後幸いにして、一度だけ逆方向の電車に乗りはしたが、スムーズに面接会場近くの駅に辿りつく事が出来た。
前日に「先日連絡した時間より一時間遅く来て下さい」という半ば常識に反した連絡が来た為、一時間程近くのカフェで過ごす。手帖にひたすら、やりたい事や考え方、志望動機の論理フローを書き出す。(しかし紙の上で何度も確認したところで、その通り話した試しはほぼない)
面接自体は、こちらのやりたい事や夢、考え方等を質問される、これぞ人物重視という面接を半時間程で終了、その後15時まで周辺を散歩する事にした。運悪く「仕方のない体調不良」により変な汗をかく羽目にはなったが、よい気分転換になった。面接というよりは、気分転換に来た気がした。

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時間と方向音痴の都合上、電車や長時間の徒歩による遠出は出来ない。よって、会場の青山から表参道を散歩する事にした。表参道はひたすらブランド店が立ち並んでいて、立ち寄り様がなく、雰囲気を味わうのみで通過した。COMME des GARCONSツモリチサトは好きなので、少し時間をかけて通過する。服を見ているだけなら悪くない。人ごみと香水の匂いを避けたいだけであった。
昼食は、「青山に来たら、何が何でも行く」と決めていた、尊敬する書籍商兼文筆家の古書店(写真)のすぐ隣で摂る。商いの街に比べれば、同じ量のランチで千円は割高であるが、雰囲気と家具と味が良かったので良しとする。選び抜かれた食器と家具を、手帖に描き写してみたが、上手くいかぬ。特に硝子瓶は未だうまく描けない。植物は幼い頃から書き慣れているから、さすがに上手くいった。
件の古書店には、小一時間籠もり、念入りに本を選んだ。さすがに期待を裏切らぬ品揃えで内心呻る。そして困る。どれも、欲しい。グッヅまで欲しい。
古書店にはもう一軒行ってみたが、こちらも居つくと長くなりそうで、しかも散財は一軒目で済ましてしまったので、眺めるだけで退出する。古いアパートに小さな店、というスタイルは流行であるが、憧れる。

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祖母や母から「万が一お小遣い」を貰っていたので、必死にお土産の「ひよ子饅頭」を探す。広い改札口に回ってやっと見つけた。おかげで一本新幹線を遅らせてしまった。・・・自由席でも席があるなら、わざわざ指定席を予約しなくとも良かった、と後悔する。しかも、「ひかり」を予約したが、遅れて乗った「のぞみ」の方が早く着いた。勿論爆睡のうちに二時間経過した。

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ゼミの用意をせずに、旅気分と独特の寂寥とけだるさを引きずったまま(半分は「体調不良」の所為だが)眠りに落ちてしまった。
翌日早朝は、少々大変な目に遭うのだが・・・(飛び起きて準備)

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耳慣れない言葉を聴きたかったのだが、都人は私語が少ないのか、声量が少ないのか、あまり耳にしなかった。少し残念である。その代わり、でもないが、いかにも都、というべき制服と雰囲気を身にまとった少年達に出遭い、その点で満足した。やはり都弁を聞かせて欲しかったが。
近頃は少年少女達まで洒落た眼鏡をかけている。「尖った」子ども達は好きだから、よくよく観察してしまう。