206号の残像.

藤田嗣治展の招待券を研究室に一枚、「お裾分け」で置いておいたらば、一瞬で消えた。凄い人気である。

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楽器のレッスンに行くと、楽団でもお見かけした方が先にいらっしゃっていた。演奏会で何度かアンサンブルに出演されていて、その選りすぐり成員の中でも一等目立つ音の主であった。何週間後かに開催されるコンクールに出場されるそうで、練習面だけでなく精神的にも必死の様子であった。
しかしお上手な方の後のレッスン程、嫌なものはない。
以前も被りそうになり、日程を調節したくらいに、前々からお上手と有名な方々の後は避けている。
当日そうなってしまったものは仕方なく、師匠に「こんなお上手な方の後は嫌です」と予め唱えておいた。そうすると、師匠はいつもよりやけに優しくなり、それが何だか可笑しかった。またもや大人に気を遣わせてしまった。
師匠は優しすぎるいい人で、よって問題児が続出する。残念ながら、師匠を癒す事は出来ません。ごめんなさい。
葡萄色の大きなチェックのシャツはなかなかお似合いで、「そのシャツ良いですね」と云いたかったが、未だそういう仲ではない。

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師匠に叱られる夢まで見たので、今日こそはと早朝から練習、しかしそればかりしている訳には行かずに論文、やはり両立が必須である様だ。出来る事ならそうしたい。集中力が切れたら楽器、という時間の使い方でいく。叱られる夢を見るのは、やらなきゃ、と強く思っている時よね、と後で兄弟子(女性であるが)にご理解戴けた。勿論そうである。
授業後はここぞと練習を進めるが、その前に論文の資料かき集め作業を済ます。我が大学には資料がほぼ無く、取り寄せは私費、頼りの教授にも「あー前の大学に全部置いてきたんですよね」と云われ(一年専任教師を待った甲斐無し)すでに泣きそうである。1時間以上かかった。探している論文はインターネット上に転がってないか、図書館にもないか、という事をしっかりチェックしてから申請しろ、というから検索から申請までに大層時間がかかる。又、PDF化した論文の価値と信憑性も疑わしい。

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移動を願い爪先で少し弾いた虫が動かなくなり、罪の意識に随分長い間苛まれた。

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久々にバスに乗って帰る。夜の街を茫と眺めながら、と思っていたが、メールをせねばならない用事があり、電話の画面ばかり見て過ごした。「あのタワーは、蝋燭がイメージされてるんだよ」という観光客のものらしい自慢げな声がした。(実際は灯台なのであるが)

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付近の均一ショップで、久々に500mlのグレープフルーツジュースを買った。糖分の摂り過ぎより、クエン酸摂取に意識が向いた。すぐに飲み干す。
ひとりで過ごすこういう日も良い。特に夏の宵は。