祭の外観.

作業のお供はインスタントコーヒーに限るのだが、暑くなり始めた頃から、自宅のポットの電源は切られてしまっている。切ない。一々お湯を沸かすのも面倒で(そこは水から沸かしてドリップしたいところだが、近頃とことん「手間」というものを割愛する生活に走っている)、水にも溶け易いという性質を良い事に、天然水をざざっと注いだアイスコーヒーばかり飲んでいる。なんたって、良いものは手間がかかって、そして高価なのだろうか。バーゲンではバナナの叩き売りかの如くに値段で服等が売りに出されているが、叩き売りでも貧乏人には手が出ない。(靴下くらいは買いだめする必要がある。他人の御宅やお座敷に、素足や古びた靴下で上がる訳にはいくまい。)バーゲンでも通常の値段でも手に入らない点では同じなら、貯蓄で手の込んだ上質のものを買った方が良い、というよく分からない理屈を捏ねて、今年もバーゲンセール前を通過する。どこにでも売っている様な服を買うくらいなら、古着屋ででも気に入りを安価で引き取った方が良い、という、もう一つ妙な理屈も捏ねてみた。

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他大学に一日籠もる。英語論文が三冊なので、とても一日では目を通しきれず、一週間の入館許可申請をしてある。今日は複写をするだけにして、日曜と祝日でそれを読み、必要箇所は火曜以降また大学に行って読み進める事にする。

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ふと感じた事を忘れたくない、と思うなら、どこかに書き留めておかないと近頃はすぐ忘れてしまう。勿体無い。

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スコールのように定期的に襲う雷雨と祭りの人だかり、出店と食べ物の匂いで、古都はごった返している。趣は爪先程もなく、大通りから一、二本遠のくとやっと落ち着きと祭りで華やいだ町の風情が戻ってくる。 山鉾とお囃子は脇見するだけにして、歩みを進めた。

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行きしなのバスの中から、新撰組の隊列が見えた。何事かと、まどろみから醒めた。若者ばかりであるから、町内のイベントはなさそうである。新撰組に惹かれるある年齢の若者達が、祭りに乗じて決起したに違いない。髷を落として洋装を召した土方歳三までいる(なかなかいい出来だった)。 実際あの羽織を羽織って出歩くのは、格好悪いので隊士(特に土方あたりだろう。色が気に食わなかったとか)は嫌がったらしい。

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お茶をどこかに入って飲むにも、苦労する。いつもは程好く空いている穴場でも、満席の為「丁重に」追い返された。歩き疲れ、また雨に降られて膝から下がびしょ濡れだった所為で、むっとした顔を返してしまったかもしれず、後後申し訳なく思ったが後の祭りである。500円以上かけてコピーした論文を、抱え込む事で雨から必死に守った所為で肩が痛んだ。紙物は濡れると終いであるから、出来れば雨の日は持ち歩きたくない。いつもはビニル製ブリーフケースを持って出るのだが、こんな日に限って忘れてきた。 結局腰を落ち着かせる為に、大通りを二本北上した。(古都では、北上を「上ル」と云う。アガル、サガル、ヒガシイル、ニシイル)
兎に角、風情も何も無い一日と繁華街であった。
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横笛を吹く男性達と音に惹かれた、具体物ではなくてそのスタイルに、であるが。しなやかに腕を上げ下ろして太鼓を叩く童達も、なかなか雅である。