夏のまどろみ.

深夜はやたらお腹がすく。お茶では喉の渇きが癒せない。意外にコーヒーの方が喉を通るのは、なぜか。水が一番。我が家では水をわざわざ買っている。
夏は背景に涼しい色しか持ってこられないので、つまらない。

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突然二軒先から、ピアノをめちゃくちゃに叩く音が聞こえてきた。どうやら姉弟喧嘩をしているらしい。あの姉弟は喧嘩をするとどちらかがピアノに当たるのだ。「分かったから!」と弟さんの声、暫くしてまたピアノの嵐、「もういい!」と姉の声、嵐…。
以前はよく練習する音も聞こえてきたが、近頃は聞かない。機嫌が悪いと、怒り狂った様なショパンの後にピアノの雷が落ちていた。姉弟どちらが弾いていたのかは知らない。

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ピアノの音で無理矢理起こされた所為か、一日中眠く、日が落ちる前までうとうとし続けた。蝉が、庭の楢の樹にとまって鳴いている。迫力のある鳴声は続かずに、すぐに空鳴きになってしまう。未だ土から出たてなのか、或いは、もう長くない蝉なのか。スタミナがないらしい。
鳴き下手は命取りになる。哀れなるかな。
下手なら下手で何とかする、という手段を持つのは、知る限り人だけだ。
蝉も、死んだらどうなるのだろう。