劣等感の塊に風穴を.

楽団の練習に行く。朝から数時間練習したが、駄目だった。血の滲む様な練習の末に上達したという人はきっと多くいるはずだと、才能に恵まれていない事については、忘却の彼方に何とか押しやる。人より何倍も頑張らないと(と云っても、きっと見えている以上の何倍も、人も頑張っているに違いないのだが)、何をやっても中途半端で劣等生の自分から抜け出す事は出来ないのだ、疲れた頭でそう考えると、涙が止まらなくなった。
ものごとを続けていく事は、積み上げていく作業自体より力が要る。
初対面の一目で、「澁澤龍彦に似てる!」と感じた珍しい人在り。顔かたちは殆ど似ていないが、白皙の美男(造作が美しい、というよりは、造作の気配と佇まいが美しい、という類の)で存在感のある眼鏡(澁澤本人のあれはサングラスか?)をかけている上に、雰囲気が「あんな感じ」なのだ。もの云いも想像上のそれとそっくり。危うく見つめそうになって、必死に目を逸らした。・・・帰宅後写真を検索してみると、鼻と口が似ている気がしないでもない。

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睡眠不足と緊張と疲労で、祖母宅で夕食を摂った後応接間で寝ていると、誰かに上から覗かれている気がして意識を取り戻す。ふわ、と暖かいものが身体を掠めた。気を遣って祖母が布団をかけてくれているのだろうか、と目を開けてみても、周りは相変わらず闇で誰の姿も見当たらない。庭に通じる硝子戸が開いていて、そこから心地よい風が吹き込んでくる様ではあった。
お盆は過ぎてしまったのに、未だ側にいてずっと見ていてくれるのかもしれない、とぎゅうぎゅう云うあたまで微かに想った。
極限状態だと、何か普段にない感覚が働きそうなものだ。

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弱っているらしく、だあだあと泣いた後、瞼が腫れている気配がし、その情けない顔を家族に顔を見られるのは嫌なので、そのまま眠ってしまった。