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注文していた本を引き取りに、古書店に向かう。待ち合わせ時間が迫っていた為、途中気に入りの新刊書店内を流し目で駆け抜け、しかししっかり『男性作法 (旺文社文庫)』をレヂに差し出し、すぐさま古書店への道を歩き出す。意外に遠い。商店街らしい商店街を通り抜ける。オレンヂ色のひなびたデザインの電灯傘が、数十メートル毎に見える。何とか屋さん、が立ち並び、ドラッグストアと均一スーパーはその中にあっては浮いてしまう程だ。「モード何とか」というやはりひなびた(失礼)洋服屋もある。何とか屋さんに並んでいる商品はなぜ、出来れば買ってあげたくなる程の一抹の親しみと哀しみがあるのだろうか。スーパー等では、自動的、無意識のうちに買わされるのに。
『おやじの女』(本の題名である、念のため)を無事引き取り、ついでに忘れずに百円均一の棚のチェックをする。埃でざらざらしており、どれも酷く焼けている。炎天下で眩しさと暑さにうんざりしている老人の様な表情で、口元を切り結んでじっと本達は、暑い中我慢して誰かを待っている。或いはもはや、諦めている様にさえ思える。実際、諦めた方が楽である様な状況なのだが。その無口な「老人」本の中から、萩尾望都のSF漫画『スター・レッド (小学館文庫)』を拾う。現在新刊書店の店頭に並んでいるものとは違い、表紙の絵は別の人によって描かれている。昭和の香のする装丁のものである。一度涙を流した事のある漫画をもう一度手元に置いて読みたくなり、「保護」した次第。この作品の筋立ては、他の人の手ではあり得ない。
古書店タブロイド版目録のコラムによれば、古書店主も古本チェーンに買出しに行くらしい。均一セールを狙って「文化財保護」しに出かけるとの事で、従ってその行き先で同業者に出くわすそうである。本も天下の回りものなのだ。意外に寿命は長い。

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食事の時間がずれると、お腹が空く時間も必然的にずれる。夕方帰宅する前に決まってお腹が鳴り出すので、近頃は川辺で好物のたこ焼きを食べて帰る日々が続いている。演奏会が近いひとは、もぐもぐ「美味い・・・」とやっている横で楽器を弾いている。演奏に口出しがしたいが控える。川辺で楽器を弾くには良い季節がやって来つつある。最も、恥ずかしくて真剣に練習する気はない。
その後『ハチミツとクローバー 10 (クイーンズコミックス)』の最新刊を抱えて、ひとりコーヒーチェーンへ。一通り流して帰途に就く。丸く収まり目出度しである。先生にだけ「青春様が来なすった・・・」と漏らす。

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猫の鳴き真似は、下手に「みゃお」と云うよりも「まお」と云った方が、それらしく聞こえる事に気がつく。今度挨拶の時に試してみる。中国語で猫は「マオ」だが鳴声のオノマトペは「ミャオミャオ」、「マオ」の由来が気になるところである。

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これを書くうちに5,6回エラーを起こして消滅したLunascapeにお冠、思わず舌打ちをしてしまった。

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レトロはレトロと感じ結局は「レトロ」としか表現出来ないくせに、それを「レトロ」で「懐かしいもの」と呼んでしまう事は大嫌いである。懐かしいと感じるが、本当に自分にとって懐かしいのか知れなくて、気分が悪い。そもそも「レトロ」とは一体どういう状態をいうのかしらん。*1

*1:レトロ:[名・形動]《retrospectiveから》懐古的であること。古いものを好むこと。また、そのさま。 retrospective:related to or thinking about the past ・・・という事は、レトロは古々しい感じを持たせた後々の創作物で、懐かしいと感じる古びたものを「レトロ」とは云わない訳か。