罪と罰と快楽と.

せこせこと採用応募書類の空欄を埋める。幸いにして、よくある質問であった為、以前書いた書類を編集して書き写すだけで済んだ。これだけ早く仕上がるなら、なぜもっと早く書かないのか、と思うがそれが出来るようになれば、きっと私の人生は変わる。地球だってもっと速く回るかもしれない(それは困る)。
履歴書を切らした、そして証明写真も残り少ない。結局内定を戴く事に相成った(がその後内定を辞退した)企業に提出すれば終いだ、と思っていたから、買い足していなかったのである。急遽、ひとに数枚貰った。また暫く就職活動をする事になる。もう一年も活動している事になる。まあ、こうなる事は分かっていた。愚鈍な自分の事だから、きっとなかなか決まらないはずだ、と。何でも人より倍は時間がかかるのだ。
早朝の郵便局窓口に、速達扱いで出す。てきぱきと仕事をされた。祈る暇はなし。

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その後バスにて、他大学の図書館に移動す。論文を取り出して複写し、持ち帰る。複写代支払いにお釣りの無い様小銭を用意しておけと云ったのに、と静かに叱られる。これだけあれば十分だろう、と信じ込んでいた分が見事に足りなかった。すみません。こういう時は云い訳が出来ない為哀しくなるが、何がともあれこちらが悪いのだから仕方がない。うまく謝罪出来ていただろうか。
必要な論文がスムーズに手に入った事は幸いで気分が良いが、読まねばならない、という事を考えると気が重い。しかも「敵」は異国語である、只管。

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帰りのバスに乗り込み、大学最寄停車場の手前で下車し、気に入りの喫茶店で昼食を摂る事にした。昼食時の混雑を避けるつもりで、昼食前に書店に入る。欲しいものを無視しながら、ぐるりと歩く。品揃えを確認するだけ、よく見てはいけない(見れば見る程欲しくなるから)、と肝に銘じ、さてそろそろという段になって、雑誌『アルネ』の最新刊を手に取ってしまった。松浦弥太郎さん特集(真っ赤と真黒のラコステポロシャツを着てらっしゃる。同じくラコステの帽子と共に、これがとてもお似合いで驚いた)、これは平積みに戻す訳にはいかないだろう。幸いにして五百円少々である。そして一緒に視界に入ってしまったものだから、『modern juice』も手放せなくなってしまったからしょうがない。こちらは料理本特集で、料理と料理の本(近年出版されたての、というより、絶版、品切れの本が多そうな雰囲気)に関するエッセイやインタヴューが載っている、小さいながらに充実した内容である。乙女色が濃く、十分に流行の風潮ではあるが、しっかり味と中身を伴っている点が凄い。
茶店では、豆板醤と海老入りのベトナム風チャーハンを戴く。この辛さと味、そしてお供のスープに、すっかり馴染んでしまった。暫く食べずにいると、淋しくなる。
かなり久しぶりに行ったのだが、相変わらずいつも通り、食後のコーヒーにミルクがついて来なかった。覚えていて下さる。そして、初めて行った時からもう三年は立とうとしているのだ、と気づく。
マガジンハウスのフリー冊子『ウフ』を読みながら暫く寛ぎ、店を後にする。大島美幸の「ブスの瞳に恋されて」という連載エッセイが、思いの外よく書けていて(という評価は偉そうだが、正直にそう感じたまで)機嫌良く外に出た。しかしこの冊子、人気があるのか、店からはすぐ姿を消してしまう。百円位出すから、他の出版社製の冊子も含めて取り置き願いたいところである。読んで良いものは残らず読みたい。

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建物という函に閉じ篭るのが勿体無く、折角涼しくなってきたから河原で論文を読もうと考えた。少し歩いて良い場所を見つける。が、桜の木は芋虫の食べかすで散らかっていて、どこかに潜んでいるであろう芋虫の実体を想像するだけで背筋が粟立った為、丁度良い日蔭から日蔭はないが虫もない場所へ移動した。が、今度は西に旅立つ陽に邪魔をされまた移動、落ち着いたところで最後に睡魔に襲われた。さもありなん、と鞄に入れてきたカフェイン入りの眠気醒まし用ガムを三つ噛んだが収まらず、いっそ負けてしまって少し転寝をしようかしらん、と思うも、河原でひとり転寝は女子には厳しい。仕方なく、すぐ近くのテラス付きカフェに移動、程好く冷ましてほの温かいペパーミントティーを啜りながら、『アルネ』を読む。嗚呼、好きな本を読むと、途端に目が冴えるのだ。そして案の定、もう一度川辺に移動して資料を開けると、またもや睡魔が降りてきた。
もう駄目だ、というところで、待ちびと来たる。暫く肩を借りて、むにゃむにゃ云っていた。

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混雑しているバスにて、優先座席に座っている若者カップルが、目の前に立っている女性が抱えている赤ん坊のご機嫌を取っていた。席を換わろう、という考えが浮かばないのが分からない。