暗闇と聞いた音.

気持ちが全く動かないので、呑気にせざるを得ない。それでいて、何も見えないので書く事がない。見える日は何もせずとも書く事はうんとある。
今本を買っても、大抵読む事は出来ない。『ユリイカ』は吉田健一特集で、増刊号はタルホこと稲垣足穂、どないせえっちゅうのだろう。古本まつりにも行かずに終わりそうだ(交通費を捻出するより、送料を捻出する方が今のところ容易い)。暫く人には会いに行けなくなるけれども。

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もぐもぐとお菓子を食べ続けるように本を読んでいたら、暗くなり電灯をつけねばならなくなった。涙は出さずに全身で泣きながら、昨日恋して衝動買い(二千円以上したのだから、自分にとっては立派な衝動買いだ)をしてしまった一冊の本を読んでいる。
武満徹を聞き込むようになったのは、気を抜けばばらばらになりそうな身体を抱えながら教育実習に毎日出掛けていた頃だった。彼の音楽と自然音と暗闇に同化する事で、埋まらない夜をやり過ごしていた。「病んでいた」、とてもとても大袈裟に。
偶然は必然(現実)なら、余計に、偶然を焦点化してしまいたくなる。

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とても自然に、後ろ向きでいる。どうしてなのだろうか。誰に訊いても分からない。諦めているの、怠惰なの、どうしてなの。
失う事は必然で、それを恐れていては何も出来ない、と以前云ったはずなのに、また同じ地点に戻りつつある。どうしようもないやつだなあ。笑い。

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「みみをすます」


谷川俊太郎の詩にあるこの一文が、例の本を手に取った時から、胸から離れないで時々響く。