我儘の処理速度.

本当に時間がないのに、希望で打ち立てた(都合や必要で、ではなくて)優先順位を覆さない自分は、どこかおかしい。
コンクール、というものを初めて見に出掛けた。素人も素人で審査基準がよく分からないが、自分なりに懸命に見聞きした。審査員にもいろいろな人がいて、ずっと楽譜を見っぱなしで頭を上げない人もいれば(それならテープ審査で良いではないか)、楽譜を殆ど見ずにずっと演奏者に目を向ける人もいる。彼らが最終的に良しとした、音楽性、とやらは分からない。
音楽性とは一体何の事だろう、言葉では色々聞くけれども実際のところはちっとも見えない。掴んだ、と思いきや、それは本物なのか疑う事で台無しになる。自分は本当に音楽をやっていけるのだろうか、何を目指してやっていくのだろうか、相変わらずそればかり考えている。プロにはならないけれども、人に聴いてもらう音楽を本気でやるつもりではいる。ずっと悩み続けていくのかもしれない。結局、何も分からなくなった、何も分からなくさせられた一日だった。
音楽を何だと思っているのだろうか、皆。今度師匠に尋ねてみよう。

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中秋の名月の翌日だというのに、その当日かと思う程月が明るくくっきりしている。あの独特の色は、地表の成分の所為なのだろうか。何とも云い表わしようがなく、澄んでいるともくすんでいるともつかない、青白い輝きが妙に冷たく冴えていた。今日は睨まれている様に感じられた。温かみは感じない。
あまり明るくはっきりしているので、宇宙に穴が開いたように見えた。黒い幕に穴が開いている。

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お師匠の洋服観察を楽しんでいる。何でも良い訳ではなく、好みがある様子が窺える人の観察は楽しい。人が買い物しているところを想像するのが好きで、コンサートホールで偶然前の席に座った師匠の、気楽に散らされた髪を見ながら、例によって現実から旅立っていた。
黒いコーデュロイのジャケットが、去年に引き続き大量に売り出されているが、好きぢゃないので別の色か素材のジャケットを探している。質とデザインが良ければ黒のコーデュロイは好きな類に入るのだろうが、スタンダードなジャケットのかたちで真っ直ぐ腰まで真黒、という大量生産品はどうも好きになれないし、高価なものには勿論手が出ない。お師匠もお召しで、コーディネートし易いのはよく分かってはいるのだが。駅の階段を上り下りすると、背中の黒い人が沢山目に入る。やはり重く見える。
ひととは時々、ユニクロを気紛れに冷やかしに行く。自分では何があっても選ばないであろう色を薦めて、好みと、普段は身につけないものへの反応を窺う良い機会になり、楽しい。それは違う、それは良いと思う、と異性に云ってもらう事にも意義がある。お互い、お金があればもっと色々試すのに、とぼやいている。が、実際お金があってもなくても、着道楽にはならないで無難にやっていくのではないか、と最近疑っている。あってもなくても、お金の使い道はあまり変わらないのではないだろうか。

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今季初の鍋焼き饂飩が、帰宅後の食卓に乗っていて内心狂喜乱舞す。ただしアルミ鍋に入った既製品だけれども。麺は生から煮込むタイプで、少し時間がかかったものの美味であった。卵を入れるタイミングを間違え、殆ど月見うどんのような状態にしかならず、火から下ろした後に溶いて食べた。
ラーメン、蕎麦とパスタはやや固めが好きだけれども、饂飩とシリアルはやわやわにするのが好きなのだ。
足先から冷える気温になってきて、長袖シャツ一枚でも寒く感じる。布団も厚いのを一枚出してもらった。