拾いもの様々.

デパートの地下、いわゆるデパ地下を久々に通過した。湯気が立っていて美味しそうな食べ物に群がる人で相変わらず鮨詰め状態の階は、なかなか目的地のエスカレーターに辿り着く事が出来ない。斯く云う自分も甘辛そうな手羽先を脇見しながら、人に流されていった。高級ブランドの階は階で、客層が変わっただけで、硝子のショウケースを覗き込む、という大勢の人の姿は何ら変わりがなく、それが目には滑稽に映る。
そんな場所で、実利的な化粧品を買って(正確には、予約して)そそくさと逃げ出てきた。

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論文を取りに出掛けた先の大学は、学園祭で沸いていた。チアガールの可愛いというより勇ましい掛け声が、閲覧室まで届く。普段は女子大として男子は教職員以外居ないはずの大学に、男性がふらふらしているのは珍しい光景であろう。古本市をやっている図書館まで入ってきた男性二人は、PCで暫く遊んでいた。古本市といっても、もう3年から5年前の雑誌のバックナンバー等が並んでいるから、目ぼしいものはなさそうだ、と思いながらも、折角なので机の周りを他の人と共にぐるぐる回ってみた。無料なら良いか、と、『文藝』を三冊鞄に入れた。途端にキャンバス地の鞄が悲鳴を上げていた。特集「文学シーン1998⇔2002」「Cocco」(2002 冬)、「鷺沢萌」(2003 春)、「保坂和志」(2003 夏)『文藝』はこれだけしか残っていなかった。特集を眺めているとどれも捨てがたく、他にも置いてあったのだとすれば、他の人のところで達者に暮らせ、と云いたい。他に、『音楽の友』の特集「ソナタ形式 大作曲家100の名曲物語」*1を一冊拾い上げる。これも数年前の雑誌だから、最新情報等は使い物にならない。この多少は読む甲斐のありそうな特集だけ切り取って、後は廃品回収車に乗せてしまう予定で鞄に入れる。

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今日という今日は、論文の事を一切考えずに過ごす、と決めた。どうにかして近道や解決の糸口を発見しようと、無駄にもがく事で、余計に頭は混乱して何も見えなくなっている気がする。よって、文献のコピーという単純作業、及び、母から貰った商品券を使って買い物、という、普段とは別の部分を動かす一日となった。
いつからか痩せ始めたらしく、先日研究仲間に、ズボンが余ってるよ、と云われたので、近頃よく出回っているスキニーという類で、しかも先すぼみの相当ぴったりとしたジーンズを買う事にする。これで重ね着の幅も増えるというものだ。
昨日電車の硝子扉に全身を映してみたところ、確かにズボンの生地が腿のあたりで浮いていて、全体的にぶかぶかしている。昨日までの一週間の過食でお腹の辺りは膨らんではいるものの、肉付きは一年前位から徐々に変わっていったもの、と感じられる。 しかしながら、もしかして、といつもより一つ小さいサイズのジーンズを試着していると、いつも通り途中にて、或る箇所でチャックが止まり、なんだ、と呟く羽目になった。多分、減り易い部分と減り難い部分があるのだ、身体には。
他に、七割引きになっていた上着を一着、派手な色も悪くなかったが、服の数の都合で着まわしの利く方を選ぶ自分がさびしい。いつか、いつか、の話にとっておく。やはり割り引かれていたシフォン地の深緑色のシャツも買っていく。今季の服装は、良く云えば伝統的か懐古的で、悪く云えば歳不相応、になりそうである。
店を行ったり来たりする行為を、男性はとても信じられないと思うから、本気の買い物はひとりで行く。
百貨店の商品券で、一応百貨店の名前を冠している店で差し出すと、お使いになれません、と云われる。レヂも打ってもらった後なので引っ込みがつかず、泣く泣く現金で支払う。今月は一段と懐が寒い月という事が決定した。

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服飾の雑誌を読んでいると、脳の別の部分に刺激が行って良さそうな気になるから楽しい。一目を気にせず(というのも、大して気遣いがなされていない格好の女性が、東京コレクションだのの記事を眺めているのだから)電車の座席に腰掛けて読み進めた。

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何も考えずに暮らした一日の締めくくりには掃除だ、と考えていたのに、帰宅して夕飯を食べれば、買い物の疲れで眠り込んでしまい、何も出来ずに終わった。まあそんな日も良かれ。

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いつか撫でた事がある白猫を久方ぶりに見かけた。近づいて行ってみると、何か一言二言鳴いた。冷やっこく柔らかな感触を覚えているが、もはや接触は望めない関係になってしまったらしく、遠のいて行ってしまう。

*1:「この特集では、ソナタ形式(「提示部」「展開部」「再現部」「終結部」)を作曲家の生涯になぞらえて4つの部分を作風の変遷にあてはめ、その時期を代表する名曲を選出し、30人の大作曲家の名作100曲を紹介していきます。」という面白いんだか根拠があるんだかないんだか分からない特集だが、名盤紹介までついているので便利は便利、という特集である。