photo is a mirror.

uopus2006-11-22

予ねてより「古都の灯台」を写真に収めたかったが、人通りの多い駅前で立ち止まる訳にはいかず避けてきた。帰宅途中に、ドーナツを食べて読書、という近頃気に入りの行動パタンを取りたくなって駅ビルに登ったところで、人気がなく写真に収めるには好ましい風景が広がっている場所を見つけた。背後にいた、大陸の言葉を話す数人や、きれい、と呟く親子連れの邪魔にならないよう計らいながら、何とか撮影する事が叶った。
他人を見ているつもりでも、多くの場合は自分を見ている。

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ああ、そうかね (日本エッセイスト・クラブ賞受賞)』は三ページずつ程の分量で、ドーナツ一齧り毎に読むにはもってこいなのだが、一篇毎に心を奪われるのでなかなか齧る暇を与えられない。学生のコンパで、先生もひとつシャンソンでも、とカラオケに誘われ、カラオケ大嫌い、と云うのではなく(場が白けてしまうのを避ける意味で)、まだ宵の口じゃないか、歌は十二時を過ぎてから、とひらりとかわす、このダンディさ。

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猫村さん似の猫を追い駆けた。いつも通り、振り返っては足早に逃げて行く。声をかけると返事をする、その図書館住まい猫は、脂肪の所為か四角い顔をしている。
それに比べれば、地元の野良猫コロニー近くの猫は落ち着きを払っている。年配らしい猫等は、ちっとも逃げずに、目を細めてじっと地面に座り込む。何にもしやしない、餌やりさえも、と、長年の経験上知っているかの様に。

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先生がアルバイト代を持って待っている、という連絡が入ったので、期待を胸に研究室に寄る。(正確には単に、先生が待っている、とだけの連絡だったが、この様に解釈してしまう点に切実さが露見する。)なんと図々しい生徒だろうね、と自分をたしなめながら、先生が戻ってくる足音を聞こうと耳をそばだて、廊下に一番近いPCに向かう。お金の入った封筒を貰って早々に退散、という訳には行かず、仕事の感想だか仕事「場」の感想を求められて言葉に窮する。図々しさへの少々の罰か。3550円の稼ぎ方を学習した。CD一枚分を稼ぐには、五時間かかるのだ。
勿論CDなんて買う事はせずに、昨日に引き続き図書館のコピー機に千円程投入した。労働力をお金に換算してみる、という作業の後に、コピー機から出て来た紙を水と木に換算してみる、という事をしようかと思考のスイッチを入れてはみたが、想像がつかずに諦める。こうして大量にコピーした論文は、修了後どうすれば良いのだろう。保管しておいても悪くない内容の論文ではあるが(大体は英語の前置詞や言語認知機構についての論文である)、結局読みはしないだろう。
論文の紙束の山はどんどん高くなり、長期間に亘って就職活動をしてきた同期もついに就職先を決めてしまった。一体何をして暮らしているのだろう、自分は。