かきくえばかきくけこ.

お隣から戴いた、大きな柿を切り分けている途中で、「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」という正岡子規の俳句が浮かんだ。「鳴るなり」を「鳴る鳴る」だと覚え間違っている人がいたなあ、と句を何度も反芻しながら記憶を手繰っていると、一体どういう状況をこの句は描いているのだろうか、という疑問がふと湧いた。考えなくとも何となく、句を一度唱えれば、イメージが出来上がってしまう、というのがこの俳人の力であるが故に、よくよく考えた事が無かった。奈良の柿は美味いらしい、という事も初めて知る。柿は法隆寺のある奈良のアイコンなのか、成る程。嗚呼、奈良の秋だなあ、というところだろうか。イメージは、柿と夕焼けの色でやたらと橙色がかっている。カ行の音を並べる事による印象づけも素晴しい、と唸っていると、カアカア、と烏が我が頭の中で鳴いた。
これ程実が大きいと、柿の樹も重くて大変だっただろうに(難産である)、と感謝していただく。

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古書市に行くかどうかを迷い、そんな余裕はない、と振り切る。メールの受信箱を覗くと、amazonからセールのお知らせが届き、「買い物かごに入れる」をクリックしそうになるも、英語の勉強に必要な一冊以外、何とか振り切る。ネット書店も、また今度、とウィンドウを閉じる。
我慢を覚えよう。
ただ、ゆくゆく手にしたい本のリストくらい作っても良いような気がして、去年今年と使って未だ空きのあるMOLESKINEを引っ張ってきた。すでに随筆家の名前がいくつか並んでいる。
我慢はした、しかし来年用の手帖を買う必要を思い出して、結局前述の書籍と共にamazonに二冊のMOLESKINEを注文してしまった(悩んだ末に結局来年も黒いMOLESKINEに決めた)。
Good grief!(やれやれ!)
・・・また不要な快感を抱いてしまった。何の為に毎日節約している(つもり)なのだろう。

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テレヴィを観ていたはずが、知らぬうちに炬燵で眠りに就いていて、気がつけば「氷点」ドラマ版にチャンネルが合わせてあったので、最後まで観る。登場人物と筋書きに頷きつつ、昔の家庭、というものについて少々思いを巡らす。
家事も出来ず外で働いた事もなく、ただふらふらと嫁に来たいのですが、という云い分は、幾ら現代でも通用しないよなあ(どこのお嬢だ)、とドラマから脱線してひとりごちた。陽子さんは偉い。