帽子から見える癖髪.

土曜の結婚式ニ次会の手土産に、金平糖を持って行く事を思いついたので、古都の名店に出かけて行く。女将らしき着物の女性が、この季節限定の梅味の金平糖を一つ、掌に乗せて下さった。他の金平糖とは違い、核に玉あられを使っている為果汁がよく沁み込み、あっさりとした上品な味に仕上がっている、という。儚げではあるが、口の中で梅の実の存在を知った。あまり大層なものを贈っては荷物になる、と考え、小さな箱を見ていたところ、贈り物ならばこちらがお薦めです、と云われ、結局四つの味が詰まった桐箱入りに決めた。4000円少々、という事は、一つの味で1000円もする。流石、皇室御用達の店、20日以上もかけて苦労して拵えた金平糖である。
その後、久しぶりに気に入りの喫茶店のひとつで、ランチを食べた。学生価格で美味しいものをいただけるのに加えて、庭が美しいのが、気に入りの理由だ。ナプキンが矢羽根の様な折り方(何と呼ぶのだろうか、あの折り方は)で出て来る事、フォークとナイフがチープだが適度に軽く扱い易い事、食べるのは躊躇われるが真っ赤なさくらんぼがポテトサラダの頂上にくっついてくる事、水のグラスが丸っこい事、マスターが寡黙で(でも実は声が大きい)大抵奥に引っ込んでいる事、等等、懐かしいといえば懐かしい。が、一体何時と何時を比較して「懐かしい」と云っているのか、事実自分でよく分かっていない。
見れば必ずマドレーヌを思い出す様な形の椅子を、手帖に描き写し(相変わらず下手である)、『装苑』を捲る。最新号には、松本潤のインタヴューとモデルとしての写真が三枚載っている。三種類の帽子をまた手帖に描いてみて、帽子と髪型の関係をふわふわと考えた。ベストの存在も見直した。
松本潤は、ややこしい恋愛関係の役ばかりやっているが、彼自身はどう思っているのだろうか、と「僕は妹に恋をする」が映画化するという話を耳にしてから気になっていたので、『装苑』と気持ちが通じた様な気になって何度か読んだ。

「男である以上、王子様でいられるわきゃないんですよ」

というコメントに、何だか安心した。
パリ・コレクションでは、もう冬が明けている。

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ニ次会用のバッグを探して、少しだけうろつく。ワゴン一台でやっているアンティーク屋にかかっている、スウェードの赤いバッグとトカゲ皮製のバッグを手に取る。すかさず店員がワゴンの向こうからやってきて、説明を受ける。トカゲは、年と雰囲気、着こなしに不相応だと感じたので、迷った挙句置いておいて、70年代のアメリカ製という真っ赤な方を店員に差し出す。スウェードは冬に売っておかないとね、と嬉しい顔をした。トカゲに傾いていた時は浮かない顔をしていたので、彼女にとっての「正解」を選択した様だった。しかし、ニ次会に持っていくには、少々派手で大き過ぎるのが難点なのだが・・・
一昔前のハンドバッグには、大抵本体か中身と同じ生地のがま口と鏡がついている、という事を知った。小さいものには目が無いものには、堪らない情報である。ただし、鏡に限っては、アンティークで買うには何だか不気味に感じる。塩でお清めをすると良さそう。