納豆リターンズ.

疲れて帰宅したところに納豆御飯と味噌汁、煮物だと、もう後は入浴して寝てやるか、という気持ちしか起こらないだろうから、母の為に唾液の出そうなものを拵える。ケンタロウ考案の料理は食欲に応えてくれそうだ、という思い込みの元、図書館で借りた『ごはんのしあわせ (ブルームブックス)』と冷蔵庫とを照らし合わせた。
冷蔵庫の野菜室の中身はあまり芳しくなく、簡単漬物、と書かれたビニイルが強烈な刺激臭を放っていた。大根の青いところが暇そうにしていたので、葉も含めて使ってやる事にして、他に使うものは買出しに行く。
大根を梅肉と鰹節、みりん、醤油で和えたものと、粘り気を落とした(という事にしたが、水ではちゃんと落ちてくれなかった)納豆を使ってチャーハンを作ってみた。納豆チャーハンは、作っていると香ばしい匂いで気分が良いが、台所から少し離れたところに「納豆臭さ溜まり」が出来てしまい、そこを通過する度、閉口する。コーヒーをドリップで淹れると、その匂いで半分は納豆の存在を消す事が出来たものの、未だ後半分が未だに存在したままでいる。
料理を作ってみました、というメールを母に送ると、電話がかかってきて(母はメールが出来ない)、帰りが遅くなるので先に食べていて、と云われ、久々に「鍵っ子」の気分になった。納豆は不味ければ隠すか処分してしまう方向で、料理とは云えない和え物は食べてもらおう。

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チャーハンを作る時の、思い切りの良い強火が、心地よく感じた。御飯の水分が、もうもうと白い湯気に変わり、熱くなったフライパンに落とした醤油は香ばしく弾ける。その一連の良い風景を、火と自分が操っている、という感触が、穴あき木へらから伝わって来る。