知らない間.

昨日とはうって変わり、現実を突きつけられた日になった。手帖の字も勢いを帯びて、斜めになる。
「世の中には手の届かない所がある。」
電車の窓から、向かいのホームの電車が先に発車するのが見えた。こちらが動いている様に見えるんだよ、と母がぽつりと云う。そうだね、と返しながら、幼い頃を思い出し、こんな返答しかしなくなった自分の歳を数えた。
時間はうんとあり、その間母と取り留めなく話をした。今直面している或る現実の話と、教育や子育ての話、仕事の話等、議論し合う。客観的に見ても、目の前の人の血を、身体の半分で感じる会話だったと思う。

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ひとまず一段落して、就職活動をしていた頃によく立ち寄っていた古本屋を久々に覗いて、名随筆の「雨」「雪」、それに以前「売れないでくれよ・・・」と唱えて棚に戻した『愛情生活』を購入した。読むのはずっと先になりそうだが、感傷的になっている最中は「雨」という漢字に弱くなるので、ついつい手が出てしまった。

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「雨」を抱きかかえて、透明なビニル傘に落ちた、沢山の縁取りされた雨滴を想う。