桟橋の金具.

「ずるいひと。いつもそうするのね。」
「・・・すまねえ。行ってくれ。」

男性の名誉と誇り(それらが一般に「男のロマン」と呼ばれるものだろうか)に加えてファシズムが台頭する時代思潮を描く一方で、「男のロマン」に翻弄される女性の切なさが描かれている事が、この映画の素晴らしい点である。
どれだけ想っても決してその人の人生には踏み込ませてもらえない、報われなさが切ない。

「なによ!」

と云いたくもなるが、仕方がない。
飛ばない豚はただの豚、なのだから、許すか諦めるかしか、そばに「いてもらえる」方法はないのだ。

「馬鹿!」

切ない。
すまねえ、なんて!

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紅の豚」は、丁度先週、不意に思い立って、何年も前に録画したビデオで観ていたところだった。
古びた映像では、飛行艇の「軽薄な」赤は埃の被った様な具合に映るが、今晩のハイビジョン映像では、さすが、艶があり格別の印象が残る。ロマンである。
先週は「魔女の宅急便」もついでに観たのだが、キキが出発する日のシーンで泣きそうになった。

「何時の間にこんなに大きくなっちゃったんだろう。うまくいかなかったら、帰ってきて良いんだよ。」

とはキキの父の科白だが、まるで嫁に出す父の科白ではないか。こういう状況に弱くなるには、少々早いのではないだろうか、年齢的に。
兎も角、最近、何年も前に観た映画を観直すと、抱く感情が異なるので、面白くもあり、自分の変化に恐ろしくもある。

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給料日なので奮発して、この季節にちゃんとそぐう様な、スカートを一着買う。気に入った品が、試着してみると着こなし方が見えなくなった為、より「真っ当な」品を選んだ。
もう少し日が長くなったら、このスカートと同じ色のそらが、宵には見る事が出来るだそう。
あ、と思い出した様な色が、明日足元で翻る予定である。