港の甘い「ド」.

先週断念した、ミイラの展示会を見に行く。現在の研究では、包帯を解く事でミイラ標本を再起不能にする、という作業を避け、CTスキャンの活用で調査が進められているらしい。入り口で観客全員に、青色に縁取られた3D映像鑑賞用眼鏡が配られた。目の前に、乾いた骨と皮、読めそうで読めない象形文字が浮かび上がる。それを食い入る様に見つめている、古代エジプト人風の目元をした集団の方を、眺めてみたかった。映画を観ている客の顔を眺めるのが好きな、アメリの様に。

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港の街には、時折、喧騒をかきわけて、汽笛の音が響き渡る。身に染み付いている周波数よりは少し低く、甘美な音が身体を真っ直ぐ貫いていった。
耳慣れない発音の日本語も、この街ではよく耳にする。中国のラーメンと日本のラーメンでは違うだろうに、と苦労を思いながら、トマトと唐辛子の浮いたラーメンを啜る。辛いがさっぱりしていて大変美味しい。コンソメの味も少々した。

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骨は土に還る事はない、とひとに教えてもらった。微生物はカルシウムを食べへんねん。
生き物は死んだら皆、土に還るのだよ、という誰かの声は、それでも消えない。愛する人達の骨は、小指一本分位残っていてくれれば十分だ。