羽音.

深夜に、翌朝着て出るスカートにアイロンをあてる。「お互い」慣れてきたのか、すっと皺が伸びる。当て布代わりのハンカチを、最後にぴしりと仕上げて抽斗に仕舞う作業がとても好きだ。さてこれで明日も快適だ、と満面の笑みを浮かべて、スチーム用の水を捨てに立つ。

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同僚が、食事をする際、膝の上にさっとスカーフを敷く光景に品性を見出す。帰宅途中に百貨店の婦人雑貨コーナーに立ち寄ると、透けるか透けないかの薄さでてろんとした生地に、人は弱いのが分かった。
何故かスカーフは置いていなかったので購入を諦め、ハンカチを見て回った。色とりどりで目が回る。蝶の標本を眺めているかの如くに。
vivian westwood柄は日本製だった。

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単身赴任で社寮暮らしをしている男性同士が、寮の近くにあるらしいファーストフード店での早朝の過ごし方について、話していた。
六時過ぎから定位置で読書をしてらっしゃいますよね、だの、隣の席の人はいつも簿記か何かの勉強をしている、だの、自分の傍に座る人は新聞の切り抜きをしゃこしゃこと音を立てて毎日やっている、だの、共通の話題に華を咲かせる。
単身生活の淋しさが窺えて、切なくなった。

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会社の顧問が手にしている懐中時計には、いつも目と気が釘付けになる。研き込まれた銀色の丸い塊は、呼ばれた様に感じて振り向かされる程、謎の気配を放っている。
その時計は元々、顧問が海軍兵として乗っていた戦艦についていたもので、終戦を迎えた折記念に取り出し懐中時計に仕立てたのだそうだ。
その古時計は確かに、何でも知っている気がする。

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タイム

タイム

挑発的で官能的なテクノを見つけた。が、もう暫く緩やかなエレクトロニカに漬かり続けていたい。放っておいて欲しい心地であるからして。
tahiti80の新譜がいつの間にか二枚も出ていて(内一枚はソロ)、なんですって、と小さく叫ぶ。・・・次の給料日に買うものを、また増やしてしまった。tahiti80を聴き始めた頃の事はしっかり覚えているので、もう三年も経つのか、と時の早さを想う。