流行通信.

二週間余りの長い取り置き期間を経て、やっとワンピースを回収に行く。改めて見つめると、そのワンピースを着て町を歩いている自分が想像出来ない程、今までの服装からかけ離れているが、一度試着した時の印象を信じる事にして引き取った。フランスの何十年か前のものが、ちっぽけな日本の一女子の前で再び翻る、とは。現代にはない、着心地の良さ、佇まいの良さ、生地使いの良さが感じられる。
良いベストがないかな、と思っていたところ、こちらが何も云わないうちから店員が一枚、ニットベストを出してきて着せてくれたので驚いた。これこれ、と云われ、これこれ、と返す。もう一回、これこれ、と云われてやはり何もかもぴったりなスカートを薦められたが、給料日と云えども一日で三万円も落とす事は出来ぬ為、諦める。やはりフランスのものらしく、襞のつくりが特殊で、翻り方と繊細な模様がとても美しい。柔らかな水色の地に細い白色が幾筋も走っている。夏の砂浜の夕べを想った。
流行通信』で店が紹介された事の記念に、一冊貰って帰る。雑誌、品物、カードについてきた店の良い香が、一晩中自室を漂っていた。この買い物は止められない。

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朝焼けか夕べ、宵の口を想うスカートが好きで、多分真昼や真夜中のそれよりも自分に似合うと思う。