走れ、幸運.

uopus2007-07-15

グロテスクで悪趣味なものも好きだ。蝶というより蛾ではないか、と思えるブローチを選んだ。紋までしっかり描かれている懲り様、派手で美しい色味が余計に毒々しい。悪趣味を自嘲しながら、楽器のケースに止まらせた。

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久しぶりに古都のバスに乗り、車窓から外を眺めていると、四つ葉の看板を屋根に乗っけたタクシーを見かけた。
古都を走るその会社のタクシーは、通常三つ葉をくっつけているのだが、稀に四つ葉の看板もある、というのが専らの噂であり、丁度その噂について考えていた矢先だった。以前、スナック菓子の袋について、やはり稀にイラストが他と微妙に異なるものがある、という噂を思い出した時、目の前にその「レア」なものが丁度並んでいた事があった。
幸運はすぐ目の前にあるのかもしれないし、クローバーの四つ葉探しの才能を、「三つ子の魂」云々として今も保持しているのかもしれない。クローバーは、あるところを探せばちゃんとあり、ないところにはないものだ、という至極曖昧だが確信又は直感の様なものを持っていたので、中学生まではしばしば、クローバーの茂みの中で屈み込んでいた。
見つけたところでどうにもならない、がしかし、凄いだろ、と内心威張る事が出来るのが、四つ葉探しである。

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学生の時焼き飯とコーヒーを求めて通っていたカフェに、久しぶりに行く。会社から暫く歩いた場所に見つけてあるカフェに雰囲気が似ているのは、何の不思議もなく単純に、自分の好みの問題である、と想う。会社近くのそのカフェも、コーヒーが美味しく、読書や静かな長居を歓迎してくれ、又何か理由をつけて長居したくなる風情のある店なのである。そして、どちらの店も狭く、本やアート、オーガニックが好きな夫婦二人だけで切り盛りしている。張り切り過ぎてきな臭く、押し付けがましいカフェもあっても良いが、そこはそこで、違う気分の時に行けば良い。
それにしても、その二つの店が似通っているものだから、実は二軒は繋がっているのではないか、という幻想を抱いた。鰻の寝床の様な場所に、店の奥へ奥へと進めば、もう一軒の店にたどり着くのではないか、と。そうであっても、全く違和感が湧かない。或いは背中合わせで存在しているのかもしれない。
違う点は例えば、コーヒーの味だ。ここの店は、一口飲むと、コーヒー豆の画が脳裏に浮かぶ程、豆っぽい味がする。