蜘蛛おんな.

uopus2007-10-08

狭い部屋で蝋燭に火を灯すと、鼻の奥の粘膜に突っ張りを感じる。そのうちに息苦しさまで感じる様になったので、窓を開けて酸素を取り込む。空気の張り詰め様が急速に増す時期にあり、気持ちも年末に向けて急き立てられる。
キャンドルホルダー代わりのカップ(昭和のもので、逆さにして釉薬をかけた為、口のところはざらりとしたままになっている)で揺れる炎は、小さな玉の様につるりとやさしく、触る事が出来ないのが悔しい。

名月を 取ってくれろと 泣く子かな   (小林一茶

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蜘蛛に好かれている。
首筋や胸辺りがくすぐったいと思ってふと見ると、極小さいのや結構な大きさの蜘蛛が這っている事がある。くすぐったさを特別感じ易いところか、「少し恥ずかしいところ」にばかりにくっついているので、思わず「趣味」を疑ってしまう。
おかげで随分、蜘蛛のあしらいには慣れた。ひょいひょい、と無害なところに指か紙等を使って誘導する。しかし一度集られると、しばらく身体中にそのくすぐったさが残るので、出来れば金輪際勘弁して欲しい。

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昼食を摂った喫茶店の、隣の席に中学生もしくは高校生のカップルがパスタを食べて(うち、ひとりは啜って)いた。
あまりに初々しい感じなので観察していると、男の子の方が、
今日帰らなかったらどうなる、
と云い出した。
女の子は、一体その科白がどういう意味なのか分からない様子で困惑し、少し意味を理解した後で更に困惑度合いを深めており、大層可愛らしかった。
昼食後は男の子とデートするか、先約を優先して友達のところへ行くか、という議題が、二人の間で持ち上がったらしく、
どうしよう。
どうしたいの。
どっちでもいい。
どうしよう。どっちがいい。
の繰り返しがしばらく続き、結局決議は店の外へと流れていってしまった。
ふたりの行く末はいかに、如何に、と案じる。