コーヒー色の風に捧げる.

インスタント・コーヒーよりはましな味のコーヒーが手に入ったので(如何にインスタント・コーヒーが「薄味」であるかが分かる位の)、朝布団の中にいる時から猛烈に求めていたドーナツを買いに出掛けた。「ドーナツ欲」を動力源とする自転車は、速い。たとえ、半分タイヤの空気が抜けていようとも。
クリームやらチョコレートやら、余分なもの(胃と下腹部にとって。摂食中枢の意向は無視する)が乗っかっていない、端っこがかりりと仕上がっているドーナツを数分で完全に平らげた後、コーヒーを片手に『グレープフルーツ・ジュース (講談社文庫)』を読む。
想像するだけでは足りない。この本の隅から隅まで実行しなければ気が済まない自分は、真面目すぎる。それまでこの本を燃やす事は出来ないかもしれない。しかしながら、読んだら燃やせ、と書いてあるものだから、今すぐ燃やさなければならない、と抽斗からマッチ箱(コーヒー屋の)を取り出す。燃やせ、否未だ燃やせぬ、燃やせ、燃やせぬ・・・。
仕方がないので、青いそらに一匹の金魚が、西から東へと泳いでいくのを、寝台の上からカーテン越しに眺めていた。