アントン小父さん.

ブルックナーが好きだ、と云えば、えらく驚かれる事が多いが(何処が良いのかと批判されても、好きなものは好きなので、そんな批判はどうでも良く全く気にしない)、えらく驚いた上にえらく熱く語り、ついでにCDまでくれる人は、うちの師匠くらいのものだろう。
ブルックナーの音楽は、泣きたい時に泣かせてくれる、数少ない音楽のひとつである。聴いているうちに気がつけば、泣いているか、眠っているか、恍惚としているか。その想像を絶する無限の広がりは、他の西洋古典音楽では有り得ない。次から次へと生まれる空中の雲の如く音楽である。或いは、宇宙的、と云っても良いかもしれない。

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雲を掴む様な音楽に耳を傾けていると、机の上の電気スタンドに蜘蛛が一匹、ついいと降りてきた。親指の爪位の大きさで、放っておくと直ぐにでも部屋に巣を掛けられ、挙句の果てに子作りをされてしまう恐れがあるので、瓶と紙で以って早々に捕獲し、窓の外へ放り出す。
やっと暖かくなったので、外も過ごし易かろう。