心此処に在らず、の二人.

仕事中やはり暇に殺されそうになったので、インターネットで父の日特集を少しだけ見る。嗚呼これ贈り物に良い、これにしよう、というものは、帰宅するとすでに記憶にない。何だっけか。
そうそう、うんとかたい草加煎餅をお取り寄せしようと思っていたのだ。関西の煎餅は柔らかすぎるし、お醤油も美味しくない、と云うので。

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映画「ラフマニノフ ある愛の調べ*1を観て以来、ラフマニノフの音楽に夢中になる余り、そのあまりの切なさに気力をすっかり持って行かれかけているので、環境音楽的なジャンルのCDを、時々仕事帰りに寄るカフェで購入してみた。
 OGURUSU NORIHIDE & MOTO『gracious』

主にピアノとギターが鳴っている。服の展示会のBGMとして制作されたそうで、部屋や外界の空気とうまく混ざり合うところが、とても重宝する一枚である。ラフマニノフの所為でぐらぐら沸き立った心情も、少しずつクールダウンしていった。

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ロシア革命勃発の為アメリカへ亡命せざるを得なくなったラフマニノフは、作曲のスランプに陥る。どうして書けというのか、メロディーがないのに。故郷ロシアは無くなってしまった。故郷が、ライラックの花が、睡蓮の庭が、鐘の音がここには無い。
家族にも当たりちらし、妻のナターシャは困り果てる。
「今度は何が原因。」
「何が不満なのだ。私はここにいる。」
「いいえ、あなたはここにはいない。」

映画中のこの場面を思い出し痛切なまでの彼の望郷の想いを感じながら彼の音楽を聴くと、胸が締め付けられる。実際、映画が始まって1分足らずで、私は泪を流していた。美しすぎる睡蓮の庭は、もう記憶の中でしか存在しないのだ、と思うと、ピアノ協奏曲第2番のあの感動的なメロディーについつい乗せられて泣いてしまったのだった。

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ラフマニノフブームに乗っかったついでに『ユリイカ2008年5月号 特集=ラフマニノフ』を読んでいる。なかなか読み応えがあり、読んでから音楽を聴くと一層深みにはまる。しかしこの本は読み応えと厚みがあるので、なかなか読み終わらない。次に読みたい本に進めず、少々もどかしい。

*1:公式HP:http://rachmaninoff.gyao.jp/ ←音が出ます!注意! 一体どこから、こんなにラフマニノフ本人にそっくりの俳優を見つけてきたのだろうか。ちなみに、「不滅の名曲誕生秘話が明かされる」事は、映画では実際にない。