風邪っぴきの午後.

連休だというのに、風邪を引いた。
風邪を引いたのが連休で良かった、という言葉が出て来る様な生活を始めてからは、まだ一度も引いた事がなかった。少ない有給休暇を風邪なんかの治癒に消費したくないものだ。
風邪を引くのがあまりにも珍しかった余り、何故風邪は「引く」というのか、変に頭に引っかかったので、辞書を繰る。何かを引き込む、という他動詞の用法らしい。何度も喉にコフドロップを投げ込んでいる身としては、貧乏くじの様なやっかいな「当たり」をうかうか引いてしまった、という印象だが。病は気から、というからには、自分で良くない邪気を引き込んでしまった、という状況説明の方が正しいのだろう。
土曜日曜と大人しく床に納まっていたところ(その間、健康体を装って、両親と小料理屋で少々酒を酌み交わした事はご愛嬌とする)、祝日の今日はようやっと喉の嵐が去り、毒は鼻から抜けつつある状態に落ち着いた。
寝台で半身を起こしつつ、小窓に掛かるブラインドの隙間から射す陽の光を浴びる。秋独特の美しい、外出を誘う様な光である。べっこう飴のように艶やかで甘く、嫌味のないそれも、病身とあっては指の隙間から零れ落ちゆく砂である。
夢は、焼いた鳴門金時と新作映画を駆け巡る。
外に出れば、きっと今日は良い日だっただろう。

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