ストーンズと旅に出よう.

旅路の学生達を多く見掛ける頃となった。こんな過ごし易い時期に休暇とは良いご身分だ、と混み合う通勤列車の中で悪態を吐きたくなる。どうにもならない苛立ちは、すっかり自分の過去と他人の都合を忘れさせるのだ。空席にすべり込める可能性を諦めて、本を片手に若者観察をする事にした。
聞き慣れない言葉だ、とよくよく耳を澄ましてみると、それは大抵の場合東言葉である。この辺(関西)では見掛けないお洒落をした4人組が、ボックス席を占領して寛いでいる。格好には煩くない、という様にしれっとした顔をしながらにして、身の丈に合ったこだわりを捨てていないところが垢抜けた様子で、何とも小憎たらしい。
ローカル線での単調な旅路に、メンバーはそろそろ飽きてきたらしく、4人それぞれが徐々に自分の世界に入り始めた。一人はiPodの画面に映し出される映像を追いかけている。向かいの一人は早々に睡魔の虜になっていた。また一人は最初読書をしていたが、直に何処からかアイマスクを取り出して闇の世界へと沈んだ。4人目はといえば、ストーンズはやっぱかっけーよな、と今時殊勝な一言を呟き、ヘッドフォンから流れる音楽に合わせて首を振っていた。
i can't get no
i cant get no......
satisfaction
と、時折シャウト未満鼻唄以上の声で歌詞を発する。この人は、夜中に平気で大音量で音楽を聴き、近所からの苦情が出れば、訳わかんねえ、と返答するタイプだろう。没頭型である。
しかしながら車内では、おや、と一瞬この雑音に耳を傾けた大人が少なからず居たに違いない。電車を降り人混みから離れた時、さーりすふえぁーくしよぉーん、と呟いた大人も。
oh, i'm tired.