「退屈」座り.

燭の炎が尽きるのを今、体育座りで待っている。深い器の中で蝋燭を灯すと、後々マッチで芯に点火する際一苦労する。今日等は、なかなか巧く行かずマッチを5本も無駄にしてしまった。マッチを縦向きに持つと火傷しそうになるので、器の方を傾けたりして苦心し、やっとの思いで無事点火することが出来た。また同じ苦心を繰り返すのは煩わしいし、蝋も残り少ないことだから、としばらく灯しっぱなしにしている。が、一度点いた炎はなかなかに根気強く、小指の爪くらいの大きさで揺らめき続けている。
蝋燭を入れている器は、骨董屋にて安価で求めた昭和初期のデミタスカップで、取っ手が付いている為に点火後も扱い易く重宝している。しのぎ、という、側面にぐるりと入った縦の溝が好きで、見掛けるとつい手に取ってしまう。それが白磁だと尚更弱い。白磁でしのぎ、という「弱点」を総括したのがこのカップなのだが、昭和初期の白磁の特徴なのか少々薄手で、がさつ者にとっては注意を要する品かもしれない。
点火に悪戦苦闘しているうちに、箱に残っていたマッチをすべて使いきってしまった。あと二本、あと一本・・・と擦っていると、マッチ売りの少女を思い出した。気に入りの絵柄を付けたマッチ箱を、老舗喫茶店を回って探す楽しみが出来た幸せも、そう思うと一塩である。

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帰宅後自室で一息つきながら、今日は小三治師匠の『ま・く・ら (講談社文庫)』をぽつぽつと読んでいる。題名の通り、落語の前置きである「枕」を集めた本で、ウィットに富んでいて非常に楽しい。景気と機嫌の良い話ばかりでもないが、調子が良いのでどんな話題でものめり込んでしまう。
落語の世界でも、話というのは今日のお天気の話題からなのだな、と思うと、古典芸能もそう構えすぎるものでもないのではないか、と感じる。

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蝋燭はまだ尽きない。ホワイトムスクの香と熱気にくらくらしてきたので、今日のところは諦めて眠ろう。と思うが、『ま・く・ら』の方が面白くて眠れない・・・。
自分の書くものが面白くないのも、大概にせねば。