2007-01-01から1年間の記事一覧

その道.

仕事で時折耳にする言葉が美しい。 蝶番、は「ちょうつがい」と呼ばずに「ちょうばん」と呼ぶのが残念だが、泪目(なみだめ)、鬼目(おにめ)、等細々とした道具や器具の名前が、時々耳を潤す。 雑巾吊り(ぞうきんづり)、という部位があるのだが、何度説…

大河幻想.

先立つ理性に感情がついていかない。 理性で以って、その時出来うる限りの正確な判断をするも、その判断結果に後々感情が納得してくれないのだ。感情がオーバーフローして、理性の冷静さ、冷徹さを責めたてる。けれども事態は覆されない。もうどうにもならな…

葱に涙す.

魔性の楽器に出会ってしまったので、今まで使用していた楽器を手放す事にした。使用しなくなって放置しておくと、どんどん質が落ち、音も鳴らなくなる為である。今必要としている人のところでうんと活躍する事を願い、断腸の思いで楽器店を後にした。ほんの…

面白きこと.

電車の窓辺で頬杖をついていると、ゆっくりとすれ違っていく電車で同じく窓辺に頬杖をついている何人もの観客の顔が見えた。 人から覗かれる心配がない、とあってか、各々比較的正直な顔をしている。疲れた顔からアンニュイな顔、窓の外に好奇心を抱いている…

「私の絶望」.

F.Vinaccia 1891 絶望する程嵌り込んで、終には連れて帰って来てしまった。名前はDante、取り急ぎ。 ごちゃついて目の前に投影されているは街中の風景でなく、毒々しいまでに混沌化した我が心象か、と思える程だ。紫色したゼルか、はたまた戦闘機の様な格好…

カスケィド.

勤務先が二府先にあるので、車窓からは色々な天候を窺う事が出来、天候が不安定な季節は意外に楽しい。自宅ないし会社を出発した時と、車中、下車後で天候ががらりと変わる事も、ままある。 今日は一瞬、車中から滝が見えた。 或る駅での停車中に豪雨に見舞…

手の鳴る方へ.

手の鳴る方に歩いていけば、一日は終わる。

一日限りのサボタージュ.

胃がそれ程強くない者には、酒に肴は必須であるらしい、と呟きながら、一日横になっていた。具合は大して悪くないが、起き上がって活発に活動するには、体内に憂鬱が充満し過ぎていたので。

星に願った.

星に願ったあの人は、やはり来なかった。 - それでも私は私らしくあれた。 - この間買ったワンピースと楽器の音は概ね「好調」である。

指の間のすり抜け方.

ヴイ字よりも丸首が似合う、という事を発見し、ついでに初めて黄色がかった服を購入した。 扱われている服の対象年齢が何十年か上を行っているものの、店員との会話と品物の生地が気に入っているので、バーゲンに行ってみた。楽しいが、買おうと思う服があま…

ぱぴおんの行く末を案ずる.

猫によく遭遇し気分を良くする。にゃあにゃあ、と呟いては猫達を無闇に追い駆け、結果虚しく冷たくされる事に、である。自分が相当可笑しい。 大学に寄り、盆地特有の熱気と湿気の塊を浴びながら楽器を弾いた後、照った顔で電車に乗ると、蛾も顔に留まる。蝶…

鈴カステラワルツ.

鈴カステラが、妙に食べたくなり携えて帰る。お皿にぽろぽろと取り出して、指でくるくると回してひとつ、口に運ぶ。時折摘んで、固さ或いは柔らかさを確認してみたりもする。一体誰が、小さいサイズのカステラを鈴の形にしてやろう、と思い付いたのだろうか…

ふらふらとあがる湯気.

会社から突然、「宅地建物取引主任者資格」略して「宅建」を取得せよ、と指令が下ったので、同じ様に白羽の矢が立った(この言葉は、良い意味を含む文章で使用するには不向きだと思う)同僚と共に、予備校の梯子をする。どの学校も、一生懸命説明して見積り…

流行通信.

二週間余りの長い取り置き期間を経て、やっとワンピースを回収に行く。改めて見つめると、そのワンピースを着て町を歩いている自分が想像出来ない程、今までの服装からかけ離れているが、一度試着した時の印象を信じる事にして引き取った。フランスの何十年…

眠気を誘う音.

出勤前の習慣で、早朝に目が覚めるものの、休日と分かり更に雨の音を聞いていると、二度寝三度寝、と再びずるずると眠りに引き込まれて行った。こうして昼近くまでずるずる行ってしまうと、一日中ずるずる眠いまま過ごさねばならなくなる。しかし、果てしな…

檻に入れるか.

梅雨の中日、外出には丁度良い位の曇り、を見込んでいたところ、暑いと感じる程に晴れてしまったので、動物園行きは急遽中止にした。カフェで昼御飯を食べてゆっくりし、お互いの買い物にお互いを付き合わせながら帰途に就く。 予てより疑問であったお金の使…

終わった日々.

仕事帰りに大学に行けば、一日はこれからだ、と云わんばかりに学生が活動している姿を目にする。良いなあ、と思う一方で、自分はもう違ってしまったのだ、という寂しさが込み上げる。ステージをひとつ、違えてしまっている、すでに。ボックス前の木テーブル…

子どもの目.

コーヒーチェーンで、ソーセージクロワッサンとコーヒーを流し込み、電車の時間に合わせて店を出て、師匠宅に向かう。 古都のバスに乗り込むと、隣の席から外国語が聞こえてきた。さえずりか相槌の様な、短くこじんまりとした言葉で、どうやら大陸の北の言葉…

二日酔いとの付き合い.

胃がすかすかで若干気分が良くない為、昼食を多めに摂った。が、それでもすかすかは消えず、そこでやっと二日酔い気味である事に気がついた。頭がくらくらで胃がすかすか、というタイプの二日酔いの時は、PC作業が一番辛い事にも気づいた。白い画面がちか…

夜の人達.

会社の集まりの後食事会になり、その二次会に夜の街に連れ出され、行き着いた先は「夜の店」だった。お酒と女性に囲まれて良い気分にやり込められている男性との会話を差し置いて、美しく着飾り品と行儀を身につけ、こんな遅い時間に男性をもてなしている女…

おやつを貰いに.

先週行った珈琲屋に、ワインの会の予約を入れに行く。新しく入った香ばしい珈琲をお供に会話を重ねていると、最初は小さな饅頭、次に大きなシュークリーム半分が出てきた。すっかり、おじいさんのところにおやつを貰いに来た小学生、の様になっている。ちゃ…

あまりに騒がし過ぎるので.

楽団の活動参加について、実質的に無理になるまで止めません、とコンサートマスターに宣言したからか、自分の音楽に絶望しても、参加を諦めるという決断には至りそうにない。気持ちはあるのに状況が有無を云わさない時が、いつか来る予感がするからかもしれ…

相応についての気鬱.

服装にあれこれ悩んだ挙句、やっとの事で、こちらにしよう、と決着をつけ、身繕いをしているところに父が、もうちょっと若い格好をしたら、と云うので、落ち込んで再び部屋に戻る。結局、悩んだ末決着をつける前に手にしていたものを着込んで、憂鬱を抱きな…

気を興す.

一度飲んでみて首を傾げたはずの、ウーロンチャイ、という飲み物を再び手に取り、手に取る事はあるまい、としていた『Land Land Land―旅するA to Z (ちくま文庫)』を、ソファに埋まって読みふける。書を捨てて町に出なくてはならない気分を興した。 - 生じて…

ラム酒一杯、ひとり旅.

会社社長が来るというので念の為空けておいた外食予定が、「ふい」になったので、ひとりで街に繰り出す。 ひとりでお酒を一杯飲んで帰りたくなった日に寄るカフェの、アルコホル一杯無料チケットを財布の中に見つけたので、丁度良かった。茄子と肉味噌あんか…

けものの道行き.

暖かくなった頃合を見計らって、痩せ野良猫の仮称ノラが、我が近所に帰ってきた。なぜこの辺に居つきたがるのかしらね、と母と話した数日後、ひとつの答えはお隣さんから返ってきた。 隣の家では以前より猫を一匹飼っている。完全に「家猫」で、外には決して…

猫にまたたび.

或るドラマの中で、好きな俳優がおでこに、見覚えのある柄の手ぬぐいを巻いていたので、あっ、と画面を指差してしまった。もうひとかたは、牡丹の柄だった。やはりあの手ぬぐいは買うべきだ。 今日こそ、会社の近くで読書をしながら珈琲の飲める喫茶店を探す…

かみの舞.

仕事で、地鎮祭、という行事に立ち会う。形式だけのものだが、その厳かさやもの珍しさに息を呑んだ。 浅葱色の羽織をつけ、黒いぽっくりを履いた神主が、小さな祠の前で行ったり来たりし、時折神を呼び出す為に、人の言葉ではない言葉を祠に向かって発する。…

手の届かないもの.

人間はこの世の何の役に立っているのだろう、という果てない疑問への回答を練りつつ、昨夜の残りのパスタを咀嚼する。 具の小さな蛸ばかり皿に残すのを父が見つけて、蛸嫌いなんか、と面白がって訊くので、なるべく億劫に聞こえる様に、好きだから、と答える…

大買い物魔の一日.

昨年の今頃は未だほんの毛玉だった猫のうち二匹を、夜道で見つけた。買い物の紙袋ががさごそ云うのを、目で追う。子猫らしく、もこもこでころころの身体をしていて、大層愛らしい。 構ってくれないので諦めて歩きだすと、遠くの方にまた猫のシルエット有り。…