2007-01-01から1年間の記事一覧

真実、暗い夜.

暗いなかで橙色の焔が揺れている、という風景に最上級の安らぎを感じるこの遺伝子は、何時から存在しているのだろうか。暗いなかで何をしているのよ、とぱちりと電灯を点けられる事もあり、単なる好みか「性分」のひとつなのかしらん、とも、時々思う。 陰翳…

若気の驕り.

自室で育てている緑が冬の間、ぽろぽろと葉を落とし元気を失くしていくのを見かねて、復活する望みが薄い枝を何本か切った。が、葉がついているのに捨ててしまうのは勿体無く感じられたので、瓶に挿して暫く様子を見ていたところ、いつの間にか根を生やし始…

雨ざあざあ.

六月六日を迎えると、「かわいいコックさん」の唱を思い出す。雨が降らないと違和感を覚える程である。如何にも降りそうな日取りだというのに。 空調の所為で身体が凍りつきそうになる電車の中から、木の葉が、風にざわざわと揺られているのを、茫と眺める。…

羽音.

深夜に、翌朝着て出るスカートにアイロンをあてる。「お互い」慣れてきたのか、すっと皺が伸びる。当て布代わりのハンカチを、最後にぴしりと仕上げて抽斗に仕舞う作業がとても好きだ。さてこれで明日も快適だ、と満面の笑みを浮かべて、スチーム用の水を捨…

前に倣え.

月曜と水曜は、少しつまらない。なぜなら、これらの曜日が定休日のカフェが多いからである。大人しく自宅に直帰して英気を養うのが良い。 寄り道をしない代わりに(途中下車するにも身体が動かなかったので)、雑誌を読みながら甘いものを食べてゆっくりしよ…

good sentences.

去年の今頃は、民家の隅っこに小さな毛玉みたいな子猫が寄り集まっていたものだが、今年は見かけない。もっと心地良い場所を見つけたのだろうか。相変わらずやせ細って今にも消えそうなノラは、見つめてやると億劫そうに民家の隙間に入っていく。 - 雨の日や…

港の甘い「ド」.

先週断念した、ミイラの展示会を見に行く。現在の研究では、包帯を解く事でミイラ標本を再起不能にする、という作業を避け、CTスキャンの活用で調査が進められているらしい。入り口で観客全員に、青色に縁取られた3D映像鑑賞用眼鏡が配られた。目の前に…

それから.

今いる部署に配属されて、約二ヶ月が経った。自分では別段期間等気にしていないが、上司にとっては「そろそろ」の様で、一人呼び出されてみれば調子伺いだった。毎日が嫌で嫌で仕方がない、と嘆く同世代がいる中で、これ以上恵まれた環境をどう望めというの…

病がちな音楽.

世界から落ちそうになる。 自分の内のどろどろした部分を少しでも見せる事が、怖く感じらる。具体的には、曲を通して、こういう感情を出したい、と主張する事が怖い。そればかりか、音楽という表現行為から離れたい、とすら感じられる。恐ろしいまでの虚脱感…

刻み生姜にごま塩振って.

前日の晩に拵えた焼き饂飩を、白い琺瑯の弁当箱に詰めて持っていく。醤油仕込みのそれは、やさしい味がして冷めても美味しい。薄紅色の刻んだ生姜が、目にも舌にも爽やかである。他の誰に食べさせる訳もないので、冷蔵庫にある野菜やらを何でも刻んで混ぜ込…

うまく使えないもの.

ノートをうまく使う事が出来ない。 どんなに気に入ったノートであれ、目的が無ければ買ったりしない。それなのに、いざ使おうとなった時、そのノートが愛し過ぎる余り、どうしても使えなかったり、使い始めたものの、字や一旦決めた使い方が気に入らず破いて…

胃もたれの月曜日.

電話の対応を立て続けに失敗した事で、頭の上から落ちてきた暗さを全身に纏いながら、書店に足を運ぶ。足取りが重たければ、鞄も重たい。 書棚に刺さっている雑誌を引き抜き、腕に抱えて(何十周年かの記念号は、矢鱈と重く分厚い)、「料理」という場所で弁…

遮光性.

新聞屋のバイクの音を聞いて寝、休日の娯楽に出掛ける人々の声で醒める。 陽の光に反応して醒める、という健全な体質は、何時の日か失われてしまったらしい。光の明るさではなく、光を受けたカーテンの白さや薄さばかりが意識に上る。 一体何時、陽の光の快…

リボン結び.

港の街へ行く。 亡くなったヒトの乾いたの、なんて大して見たいとも、道徳的に見ても良いとも、思わないのだが、両親が必死で「見なさい」と云うので、ひとりチケットを握り締めて行く。 合わない靴に無理矢理付き合わされて徐々に骨ばっていく、哀しき我が…

桟橋の金具.

「ずるいひと。いつもそうするのね。」 「・・・すまねえ。行ってくれ。」 男性の名誉と誇り(それらが一般に「男のロマン」と呼ばれるものだろうか)に加えてファシズムが台頭する時代思潮を描く一方で、「男のロマン」に翻弄される女性の切なさが描かれている…

白と黒の魚がおよぐ.

大事な時期がすべて抜け落ちてしまった、この日記を哀しく想う。もはや何をどういう態度で書き記していたのか忘れてしまったが、再開する事にする。 こんなにも毎日、ものが書きたい、又は、書かねばならない、と思い続けるとは、予想だにしなかった。学生時…

壊したレンヅ.

以前は何とも思わなかった風景を、写真に収めたくなる様になった。特に食べかす等、雑然としているものも美しく感じる。 - コンビニ店員の女の子が、腕に包帯を巻いていて、痛々しい。「そう」と決まった訳ではなく、ただの疥癬か何かかもしれない。それなら…

或る日々の書置き.

或る日 「大阪の雨は風情がない。草臥れたビルの塵が余計に際立ち、街も道路もそらも、皆灰色に塗りつぶされる。 雨の日にだけ行く喫茶店があれば良い。」 又或る日 「珈琲を電動ミルで挽く時、一瞬電灯が薄らいだ。裸電球である。」 又或る日 「今日のひと…

瓶の中の果実から見た世界.

今日はなかなかよくやった方だと思う。褒美として少しばかりのお酒を与える事にした。 コーヒー一杯で止めるかどうしようか、と道を行ったり来たりし、結局甘くはないものと滲みるものを摂りたい、と心を決めて、お酒を置いているカフェに入る。芋焼酎の中国…

或る公園の桜.

花の下で食べた、ほんの小さな鯛焼きは、その花の香りのする餡が鯛の尻尾まで詰まっていた。 魚の血液も、ちゃんと赤いのだっけ。 - まだ社員の方々に目を合わせてもらえない。何も出来ないついでに迷惑をかけていくので当たり前だと受け取る。そういう意味…

「誰かを探そう」.

学生からの卒業、自立への門出を祝い、ジンライムに塩鶏の柚子胡椒だれで、自分に乾杯した。 『小さな家―1923』を第二の肴とする。

港町のそら.

餌を片手に持った食堂のご主人の後を、野良猫が三匹、尻尾を皆同じ角度に持ち上げて、足早にくっついて行った。 先十センチ程のところで曲がった尾の動きが面白い。 - 会えるうちに、と一週間に一度、港のある街にひとを訪ねて行く。古いが美しい洋風の建物…

目隠しの午後.

臨時収入あり、急遽ずっと慕ってくれている後輩を呼び出して、今までのお礼としてランチをご馳走する。球状になっており、火の通り具合を心配せずには居られぬハンバーグの「核」には、銀杏と百合根が仕組まれていて、洒落ているなあ、と唸った。しかし、も…

ちょっとした起伏.

今夜は咳が眠らせてくれない予感がするのに、咳止めドロップは後二粒しかない。結局ドロップの箱はからになり、急遽家族用菓子入れから失敬してきた喉飴一袋で凌ぐ。眠りが浅い。戦前に作られた、と云う、シンプルだが洒落たカップ(紅茶とコーヒー兼用の)…

帳簿と猫の黒い背.

いつもの場所に、野良猫を見つめようと近づいていくと、先客あり。黒いコートと黒縁眼鏡で大人しそうな男子高校生が、縞猫を見ている。と、すっと手を伸ばし餌を差し出す。にゃあ、と顔を出してとことこ近づいていく猫。はにかむ彼と猫の一連の静かな動作に…

カルーアボーイの居る晩餐.

たまには付き合いを、と思い、十数年ぶりに焼肉を食べに出る。なぜに肉ばかり食べるのか、もはや理解出来ないままに。今日は泊まる事にした。 カルーアミルクを飲む人の横で、ジントニックを飲み続ける。ごまかさないで、手を抜かないで入れてもらったジント…

カップケーキと餡蜜.

早朝に醒めたものの、今日は何も予定がなく、どうしたものか、と考えているうちに再び眠りに就き、結局午前を無駄にした。 就職活動以外の時間の使い方に迷っている。とりあえず、管理を任されているサイトを更新せねば、と思い、webデザイン関連の実用書を…

後悔混じりの目覚め.

出掛けねばならない。まずシャワーと朝食を浴びる。 向こう三日間、面接の特訓に申し込んでしまったので、こてこてに疲労する予定である。

どうしようもこうしようもサ.

日曜日である事を久々に実感し、早めに起床して、何をしようかしらん、と考えていると、気がつけば一日終わっていた。否、図書館に行き、次の演奏会に演奏する曲のCDを借り、雑誌をコンビニに探しに行き、少しだけ読書をした。 就職活動の合間に少しでも実…

好事家の宴.

子猫一匹、いつも愛想の良い成猫一匹に、声をかけられ、朝から有頂天になる。野良猫のくせにもくもくした脚をしているが、健康そうだから良い。成猫の方が好きだ、という自覚を持ってきたが、見つめられると子猫にも勝てない。 - 回数券二枚と、小銭用蝦蟇口…